「はつ恋」は、もともとシングルとしてリリースする予定のなかった楽曲だった。東芝の液晶テレビ「REGZA」のCMのために書き下ろされたこの曲は、CMのコンセプトである「記憶」に沿って、美しい記憶をテーマに制作されたと伝えられている。ところが、着うた配信を開始したところ、わずか5日間で15万ダウンロードを記録するほどの反響があり、急きょシングル化が決定した。2009年12月16日に発売されたこのシングルは、オリコン週間チャートで初登場1位、そして2000年代最後の月間シングルチャート1位を獲得するという、異例の道のりをたどっている。
CMから生まれた、異例のヒット
「はつ恋」は東芝の液晶テレビ「REGZA」のCMソングとして書き下ろされた楽曲で、当初は正式なCD化やシングルリリースの予定がなかったと伝えられている。ところがCMのオンエア開始後、視聴者からの問い合わせが相次ぎ、着うた配信という形で先行して世に出されたところ、わずか5日間で15万ダウンロードを記録するほどの反響を呼んだ。この評判を受けて急きょシングル化が決定し、2009年12月16日に正式リリースされている。前作シングル「化身」からおよそ7か月というスパンでのリリースで、福山が年に2枚シングルを発表するのは2000年以来9年ぶりのことだったとも伝えられている[1]。この曲がシングル化に至った経緯には、着うた配信という、当時まだ新しかった音楽の届け方が大きく関わっている。CDというパッケージを介さずに携帯電話一つで楽曲がダウンロードされ、その反響がそのままリリースの意思決定に影響を与えるという流れは、今の配信時代につながる先駆けのような出来事だったとも言える。CMソングという入口から着うた配信、そしてシングル化へと駆け上がっていく過程は、音楽の届き方そのものが変わりつつあった時代の空気を映し出している。
「美しい記憶」というテーマ
CMのコンセプトが「記憶」だったことから、「はつ恋」は美しい記憶をテーマに制作されたと紹介されている[1]。歌詞を丸ごと引用することは避けるが、タイトルが示す通り、初めての恋というものを回顧するような世界観を持っている楽曲だ。初恋とは、多くの場合、成就しないまま終わってしまうものかもしれない。それでも人生のどこかで、ふとした瞬間にその記憶がよみがえり、今の自分を静かに支えてくれることがある。この曲が長く歌われているのは、そうした普遍的な感情に、誰もが自分自身の記憶を重ねられるからだろう。ある考察系のブログでは「初恋が男の人生を左右する」という視点で歌詞を読み解いているものもあったが、これはあくまで一つの個人的な解釈であり、公式に発表された楽曲コンセプトではない点には留意しておきたい。
珍しいマイナーコードのアレンジ
音楽的な特徴として、この曲は福山雅治にとって初めてマイナーコードを主体としたシングルだったとされている。編曲には福山雅治自身に加えて、長年アレンジャーとして参加してきた井上鑑の名前もクレジットされている。ピアノの音を一部逆回転させた処理や、クイーンを彷彿とさせるようなギターフレーズが取り入れられているという指摘もあり、CMソングという枠を超えて、音作りの面でも丁寧に作り込まれた楽曲だったことがうかがえる[1]。そしてこの曲はオリコン週間シングルチャートで初登場1位、月間チャートでも1位を獲得し、2000年代最後の月間シングルチャート1位獲得作品として記録されている。2010年度のオリコン年間シングルランキングでも19位にランクインし、福山にとって年間トップ20入りは2006年以来のことだったと伝えられている[2]。CMソングとして生まれた楽曲が一つの時代の締めくくりを飾る記録的なヒットになったという経緯は、福山雅治のキャリアの中でも特異なエピソードとして語り継がれている。
誰の中にもある、はじめての恋
東京で働いていた頃、忙しさに紛れて過去の恋の記憶を振り返る余裕などなかった。それでも、ふとこの曲がテレビから流れると、学生時代に感じた、うまく言葉にできなかった淡い気持ちを思い出すことがあった。初恋というものは、多くの場合、実らないまま終わる。それでも、その記憶があったからこそ、今の自分の人との向き合い方が形作られている部分もあるように思う。相続や実家の整理に関わる仕事をしていると、人が最後まで手放したくないものの中に、思い出の品や写真があることに気づかされる。財産としての価値はなくても、その人にとっては何よりも大切な記憶の器だ。「はつ恋」というタイトルが指す、実らなかったかもしれない初めての恋の記憶も、同じように、その人だけの財産なのだと思う。この曲を聴くたびに、誰の人生にも、値段のつかない美しい記憶があるのだと、改めて気づかされる。
予定外から生まれるものの強さ
本来シングル化される予定がなかった楽曲が、視聴者の反響によって急きょ世に出され、そして年間チャートの上位にまで駆け上がっていく。この一連の流れは、あらかじめ狙って作られたヒット曲とは違う種類の説得力を持っている。CMソングというのは本来、商品を印象づけるための手段であり、楽曲そのものの完成度が二の次にされることも少なくない。しかし「はつ恋」は、CMという枠組みを飛び越えて、多くの人の初恋の記憶と結びつく独立した一曲として認められた。作り手の予定調和を超えて、聴き手の側から求められて生まれ変わった楽曲だからこそ、この曲には偶然の強さと必然の両方が宿っているように感じられる。あらかじめ緻密に計算されたヒット戦略ではなく、聴き手の反応そのものが楽曲の運命を切り開いていく。そういう偶然性を受け止め、きちんと形にして届けきった制作陣の判断力もまた、この曲の成功を支えた要素の一つだったのだろう。
参考リンク
- [1] はつ恋 (福山雅治の曲) - Wikipedia
- [2] はつ恋 | ORICON NEWS
- [3] はつ恋 関連記事 | ウォーカープラス
- [4] はつ恋 発売告知記事 | TOWER RECORDS ONLINE
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