少女時代の「Gee」も、好きだった曲です。自分より年下の世代が前に出てきて、その眩しさを少し離れたところから見ている感覚がありました。かわいいなあ、と思う。けれど、それは上から眺めるようなかわいさではありません。むしろ、ここまで徹底して明るさを作り、全員でひとつの世界を成立させることへのリスペクトがありました。若さは、それだけで成立するものではありません。若さを作品として形にするには、訓練と集中力と覚悟が必要です。
「Gee」は、その意味でとても強い曲です。軽く聴けるのに、作りは軽くない。かわいらしさが前面に出ているのに、MV全体は細部まで管理されている。表情、振付、衣装、カメラの切り替わりが、ひとつの明るい空間を作っています。K-POPが日本の音楽風景に入ってきたとき、自分が驚いたのは、曲の良さだけではなく、この完成度でした。年下の人たちが、自分たちの時代の方法で、きちんと世界を取りに来ている。その姿がまぶしく、少し頼もしくもありました。
かわいい、だけでは終わらない強さ
「Gee」は、まずかわいい曲として届きます。けれど、そのかわいさは偶然のものではありません。声の配置、振付の統一感、映像の色、表情の作り方。すべてがひとつの方向へ向かっています。だから、ただ若い女性たちがかわいいというだけでは終わらない。かわいさそのものが、作品として鍛えられている。そこに、少女時代というグループの強さがあります。見る側は自然に楽しんでしまいますが、その自然さの裏には、相当な準備があるはずです。
年齢を重ねると、若い世代に対して複雑な気持ちを持つことがあります。負けたくないと思うこともあれば、もう自分とは違う時代の人たちだと感じることもあります。けれど「Gee」を見ていたときの感覚は、そういう対抗心とは少し違っていました。かわいいなあ、と思いながら、同時にすごいなあと思っていた。自分より年下であることが、弱さではなく、時代を先に進める力として見えました。
この感覚は、仕事にも通じます。若い人たちが新しいやり方で情報を発信し、映像やSNSを使いこなし、こちらが当たり前だと思っていた手順を軽々と越えていく。そのとき、ただ古い側の人間として構えるのではなく、素直にすごいと思えるかどうか。少女時代の「Gee」を好きだった理由には、その素直さが含まれている気がします。かわいらしさを入口にして、年下の世代への尊敬を覚えた曲でした。
東京で見た、K-POPの明るさ
東京で働いていた頃、K-POPの存在感は少しずつ街の中で大きくなっていきました。テレビ、店内の音楽、駅の広告、ネットの動画。少女時代は、その変化をとても分かりやすく見せてくれたグループです。「Gee」の明るさは、東京の街にもよく合っていました。人が多く、情報が速く、新しいものが次々に現れる場所で、この曲のスピード感と視覚的な華やかさは自然に響きました。
ただ、その明るさは東京だけのものではありません。磐田に戻ってから聴き直しても、「Gee」は不思議と古びていません。むしろ地方で聴くと、あの頃の日本の音楽風景がどれだけ変わり始めていたかが見えます。地方の生活は、東京ほど急には変わらないように見えますが、音楽や映像は距離を越えて入ってきます。YouTubeで見られるMVは、東京にいる人にも、磐田にいる人にも、ほぼ同じタイミングで届く。そのこと自体が、新しい時代の感覚でした。
少女時代の曲を聴くと、東京の記憶と、地方で暮らす今の自分の感覚が重なります。若い頃は、東京のほうが新しいものに近いと思っていました。けれど今は、場所よりも、受け取る姿勢のほうが大事なのだと思います。どこにいても、新しいものに驚けるか。年下の人たちの表現を、素直に面白いと思えるか。「Gee」は、その感覚を思い出させてくれます。
年下の世代へのリスペクト
自分より年下のアーティストを好きになるとき、そこには少し不思議な距離があります。同世代の音楽には、自分の青春や失敗が重なります。年上のアーティストには、憧れや人生の先輩としての重みを感じます。では年下のアーティストはどうか。そこには、これからの時代を作っていく人たちを見る感覚があります。少女時代の「Gee」を好きだったことは、その感覚の入口でした。
かわいいと思うことと、リスペクトすることは矛盾しません。むしろ、かわいらしさをここまで強い作品にできること自体が、尊敬に値します。年下だから軽く見るのではなく、年下だからこそ、その時代の空気をこちらより先に掴んでいる。そう感じることがあります。自分の仕事でも、若い人の感覚や発信の仕方から学ぶ場面は増えています。昔の成功体験だけでは、今の人には届かないからです。
「Gee」は、音楽として楽しいだけでなく、自分が若い世代を見る目を少し変えてくれた曲でもあります。かわいいなあ、と思いながら、同時に、これは自分たちの時代とは違う力だと感じていた。その感覚は、今になっても大切です。磐田で暮らし、仕事をし、地域の時間に向き合う中でも、若い世代への尊敬を失わないこと。少女時代のこの曲は、そのことを軽やかに思い出させてくれます。
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