ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=GtPv7v0SPR0
確認した動画: GLAY / つづれ織り〜so far and yet so close〜(from TAKURO Produce Live 2009)(GLAY公式)

ベストアルバムに新曲として一曲だけ加えられる楽曲、というのは不思議な立ち位置を持つ。シングルとして華々しく送り出されるわけでもなく、かといって埋もれるにはもったいない。GLAYの「つづれ織り〜so far and yet so close〜」は、まさにそういう曲として世に出た。2005年1月19日発売のバラードベスト盤『-Ballad Best Singles- WHITE ROAD』の最後を締めくくる新曲として収録され、当初は表題曲でもタイアップの目玉曲でもなかった。ところがこの曲は、発表から約10年の時を経て、思いがけない形でふたたび脚光を浴びることになる。2014年に行われたファン投票で「好きなGLAYの曲」「初めてGLAYを聴く人に薦めたい曲」の1位に選ばれ、20周年のアリーナツアーでメンバーと光の演出とともに披露されると、その反響が波及して2015年1月14日には有線リクエストランキングでも1位を獲得した[1]。同年5月25日、この曲はついに「HEROES/微熱Ⓐgirlサマー/つづれ織り〜so far and yet so close〜」という3曲入りシングルの一角として単独リリースされ、収録されたのはアリーナツアー「Miracle Music Hunt 2014-2015」でのライブ音源だった[2]。今回確認したのは、それより数年前、2009年の「TAKURO Produce Live」で披露された映像である。ベスト盤の一曲に過ぎなかったものが、なぜここまで長く聴き継がれる曲になったのか。制作の背景と、この曲がたどった10年の軌跡をあらためてたどってみたい。

大石セレクション:曲がいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★★
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:この曲がベスト盤の片隅から10年後にファン投票1位、有線チャート1位にまで押し上げられた事実そのものが、曲の強さを何より雄弁に語っている。タイアップも大きな露出もないまま、ライブで演奏されるたびに聴き手の記憶に積み重なっていった曲だからだ。TAKUROの作詞作曲と佐久間正英の編曲が生む、静かな熱量を保ったまま少しずつ音の層を厚くしていく構成は、歌詞やMVを抜きにしても曲そのものの力で成立している。歌詞の「遠いのに近い」という距離の描き方も深く、後年ファンの投稿写真でMVが作られた経緯も曲との相性がよいが、今回確認した動画自体は公式MVではなくライブ映像であるため、主視点は曲がいいに置いた。

ベスト盤のための新曲として生まれた一曲

「つづれ織り〜so far and yet so close〜」は、2005年1月19日発売のバラードベストアルバム『-Ballad Best Singles- WHITE ROAD』のために書き下ろされた新曲として世に出た。作詞・作曲はTAKUROで、編曲はGLAYと佐久間正英が手がけている[3]。このアルバムはそれまでのバラードシングルを中心に構成された全14曲収録の一枚で、「つづれ織り〜so far and yet so close〜」はその最後、14曲目に置かれた新曲だった[4]。単独リリースの主役ではなく、いわば既発曲たちの中に加わった新入りだったわけだが、ベストアルバムというフォーマット自体、それまでの歩みを振り返るための一枚である。その中にたった一曲だけ新曲を差し込むという構成には、過去の集大成であると同時に、次の10年へ向けた小さな種をまいておくような意図があったのではないかと、今になって想像してしまう。実際にこの曲がたどった10年後の展開を知ってしまうと、なおさらそう感じられる。佐久間正英という編曲者の名前も見過ごせない。JUDY AND MARYやGLAYなど、90年代から2000年代にかけて数多くのバンドサウンドを手がけてきた人物であり、派手な音数で押し切るのではなく、バンドが持つ生の質感を活かしながら曲の輪郭を整えるタイプの仕事をする[5]。この曲でも、ピアノやストリングスを大きく主張させすぎず、TAKUROのボーカルラインを支えることに徹した編曲になっているように聴こえる。ベスト盤の中では目立たない位置に置かれた新曲でありながら、後年多くのファンに「初めてGLAYを聴く人に薦めたい曲」の1位として選ばれることになったのは、この抑制の効いた作りが、時間が経っても色あせない普遍性を持っていたからではないだろうか。

10年越しにファン投票1位へ、そして単独シングルへ

この曲の運命が動いたのは、発表から約10年が経った2014年から2015年にかけてのことだった。2014年に発売されたアルバム『MUSIC LIFE』の特典ディスク「BALLAD BEST☆MELODIES」の収録曲を選ぶファン投票が行われ、「つづれ織り〜so far and yet so close〜」は「好きなGLAYの曲」「初めてGLAYを聴く人に薦めたい曲」の両方で1位に選ばれた[1]。さらに20周年を迎えたGLAYの全国アリーナツアー「GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt」で、メンバーと光の演出とともにこの曲が披露されると、各会場で印象深いシーンを生み出し、その反響が波及して2015年1月14日付の有線リクエストJ-POP HOT30ランキングで1位を獲得するに至った[1]。ベスト盤の中の一曲だったものが、10年後にファンの手によって押し上げられ、シングルの表題の一つに選ばれる。こういう巡り合わせは、決して多くの曲に訪れるものではないはずだ。同年5月25日、「HEROES/微熱Ⓐgirlサマー/つづれ織り〜so far and yet so close〜」という3曲入りシングルの一角として、この曲は満を持して単独リリースされた[2]。収録されたのはスタジオ録音の新録ではなく、アリーナツアー「Miracle Music Hunt 2014-2015」でのライブバージョンだったという点も興味深い[2]。ライブという生の場で演奏され、会場にいた観客の記憶に触れることで、初めて曲の本当の輪郭が浮かび上がってくることがある。音源として発表された時点では気づかれなかった良さが、時間を置いて、しかも生演奏という形で立ち上がってきたのだとすれば、それはこの曲にとって、ある意味で本来の姿にようやく出会えた瞬間だったのかもしれない。デビューから20年という長さを歩んできたバンドだからこそ、過去に発表した一曲一曲が、時を経てまったく違う輝きを見せる瞬間に立ち会えるのだと思う。新曲として発表された当時の評価だけがすべてではなく、その曲がどんな時間を経て、どんな聴かれ方をしてきたかという積み重ねもまた、曲の価値の一部を形づくっているのではないか。この曲の歩みは、そのことをあらためて考えさせてくれる。

「つづれ織り」という言葉が表す音の重なり方

タイトルの「つづれ織り」は、細い糸を一本ずつ丹念に織り重ねて模様を生み出す織物の技法を指す言葉だ。この曲を聴くと、その名の通り、ピアノやストリングスの音が幾重にも重なりながら、TAKUROの穏やかなボーカルラインを支えているように聴こえる。派手に主張する楽器はなく、一つひとつの音が控えめに配置され、それが折り重なることで初めて曲全体の輪郭が浮かび上がってくる構成だと感じる。バラードとしては激しく盛り上がる瞬間を強く押し出すタイプではなく、むしろ静かな熱量を保ったまま、じわじわと聴き手の内側に染み込んでいくような曲調に聴こえる。だからこそ、一度聴いただけでは気づかない良さがあり、繰り返し聴くことで少しずつその輪郭がはっきりしてくる。ベスト盤の中では目立たなかったこの曲が、ライブの一曲として演奏されたときに初めて多くの人の耳を捉えたというのも、こういう音の作り自体に理由があったのかもしれないと思う。今回確認した2009年の「TAKURO Produce Live」の映像でも、バンド全体の音数を絞り込み、一音一音を丁寧に置いていくような演奏が印象に残る。派手なギターソロで押し切るのではなく、あくまで歌そのものを支えることに徹した演奏に聴こえ、それがこの曲の持つ、静かだが芯のある佇まいをいっそう際立たせているように感じられる。サビに向かうにつれて音の層が少しずつ厚みを増していく展開も、糸を重ねて模様を織り上げていく過程になぞらえられているように感じられ、タイトルと曲の構成とが響き合っているように聴こえる。派手に盛り上げるバラードは数多くあるが、この曲は最後まで声を張り上げすぎることなく、抑えた温度を保ったまま終わっていく。その抑制こそが、繰り返し聴いたときに初めて効いてくる、この曲ならではの持ち味なのだと思う。TAKUROの歌声も、感情を大きく揺さぶるように歌い上げるのではなく、あくまで語りかけるような温度で紡がれているように聴こえる。声を張ることよりも、言葉の一つひとつを丁寧に届けることを選んだような歌い方であり、それが曲全体の静けさとよく馴染んでいる。バンドサウンドとしての厚みを持ちながらも、うるささを感じさせない絶妙なバランスの上に、この曲は成り立っているのだと思う。

「遠いのに近い」という距離を歌う歌詞

この曲の歌詞に丸ごと触れることはしないが、そのかわりに歌詞が描いている距離感について考えてみたい。英題の「so far and yet so close」は、直訳すれば「とても遠く、それでいてとても近い」という意味になる。物理的な距離があっても心は近くにある、あるいはその逆の状態を同時に抱えるような、矛盾を含んだ感情の表現だ。この曲はGLAYのバンドとしては珍しく、女性の一人称で綴られたラブソングとしても読める作りになっているとされ、聴き手によって恋愛の歌としても、あるいはもっと広い人と人との関係を歌った曲としても受け止められる余地を持っている[6]。実際、この曲が10年後にファン投票で1位に選ばれた背景には、恋人同士の距離だけでなく、長く応援してきたファンとバンドとの間にある「遠いようで近い」関係性が重なって聴こえた、という側面もあったのではないかと想像する[1][6]。デビューから20年を経たバンドと、その時間をともに過ごしてきたファンの間には、会えない時間の長さと、それでも変わらず近くに感じられる結びつきが同居している。「so far and yet so close」という言葉の対比は、恋愛の歌詞として読んでも、ファンとバンドの関係として読んでも、同じように成立してしまう懐の深さを持っている。言葉数は決して多くないのに、聴くたびに景色の輪郭が少しずつ変わって見えるのは、この歌詞が説明しすぎない余白を残しているからだろう。誰のことを、どんな距離から歌っているのかを明言しない構造だからこそ、聴き手それぞれが自分の「遠いのに近い」誰かを思い浮かべられるようになっている。これは狙われた仕掛けというより、結果としてそう機能しているのではないかと感じる。

ファンの写真が紡いだミュージックビデオ

2015年、この曲には異色のミュージックビデオが誕生している。GLAYと動画配信サービスGYAO!による「つづれ織り〜so far and yet so close〜MV Project」がそれで、専用アプリを通じてファンから募集した写真、最終的に約3,000枚を、ストップモーションの手法でつなぎ合わせて一本のMVに仕上げるという企画だった[7][8]。プロジェクトサイトには募集期間中に90万件のアクセスが集まったとされ、完成したMVは2015年4月13日にGYAO!の特設サイトで公開された[8]。バンドのリーダーTERUは、10年間積み重ねられてきたGLAYとファンの「繋がり」を映像化したいという思いからこの企画が実現したと語っている[7]。一人ひとりの投稿写真という細い糸が集まり、一つの映像という布を織り上げる。タイトルの「つづれ織り」という言葉が、楽曲の音作りだけでなく、このMVの成り立ちそのものとも二重写しになっているのが興味深い。ただし今回、記事のもとにしたのはこのファン参加型MVではなく、2009年の「TAKURO Produce Live」で演奏された映像である。ステージ上の演奏そのものに集中した映像であり、映像演出よりも生演奏の質感を味わうタイプの動画だ。曲が持つ静かな熱量をそのまま伝える映像としては十分な力があるが、公式MVとしての映像表現を主役に語るには、ファン参加型MVの存在も含めて紹介するのが誠実だろう。曲が生まれてから10年という時間の中で、ライブ映像、ファンの声、そして参加型のMVという複数の形で、この曲は少しずつ多くの人に開かれていった。一本の映像だけでは語りきれない、時間をかけて育っていった曲なのだと思う。

一本の糸が積み重なって一枚の布になるように、家や土地にも、長い時間の中で誰かが重ねてきた記憶が残っています。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。