ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=VhsuYZiLjFo
確認した動画: globe / Anytime smokin' cigarette(globe公式YouTubeチャンネル)

「Anytime smokin' cigarette」は、globeが1997年4月9日に発表した10thシングルである[1]。小室哲哉とMARCによる作詞、小室哲哉による作曲・編曲・プロデュースという体制でつくられ、Oriconチャートでは6位を記録、日本レコード協会からゴールド認定を受けている[1]。この曲がユニークなのは、リリースの順番だ。収録元となったセカンドオリジナルアルバム『FACES PLACES』は1997年3月12日に先行発売されており、その1か月後にアルバムから1曲だけを切り出す形でシングルカットされたのが本作である[1][2]。当時の日本の音楽業界では、シングルを出してからアルバムに収録するのが一般的な流れだった。それを逆転させ、米国ビルボード・ホット100的な発想でアルバム収録曲をシングルとして独立させるという手法は、当時としては珍しい試みだったと伝えられている[1]。『FACES PLACES』自体はOriconアルバムチャートで初登場1位を2週連続で獲得し、日本レコード協会からトリプルプラチナの認定を受けた大ヒット作で、「Anytime smokin' cigarette」はその8曲目に収録されている[2]。ヒットの土台がすでに完成していたアルバムの中から、あえてこの曲が選ばれてシングルになったという経緯そのものが、この曲の性格を物語っている。

大石セレクション:曲がいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★★
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:この曲を主視点として選ぶなら、まず「曲がいい」を挙げたい。小室哲哉が手がけたリズムとアレンジの推進力は、90年代globeサウンドの中でも特に前のめりで、聴き手を休ませない構成になっている。歌詞のテーマ性も強く、MVも公式に存在する魅力的な一曲だが、「アルバム先行収録という逆算の設計」を音そのものが体現している点で、この曲の核はやはりトラックにあると感じる。だからこそ主視点は曲がいいに置いた。

アルバムに埋もれなかった一曲、その理由

『FACES PLACES』は14曲を収める大作アルバムで、すでに「Can't Stop Fallin' in Love」や「FACE」といったヒットシングルを抱えていた[2]。普通に考えれば、そうした強力な曲が並ぶアルバムの中で、8曲目に置かれた楽曲がのちに単独でシングルカットされるというのは、簡単に起きることではない。それでも「Anytime smokin' cigarette」が選ばれたのは、この曲が持つリズムの推進力が、アルバムの流れの中でも際立っていたからだと考えられる。イントロから小室哲哉らしい打ち込みのビートが前に出てきて、聴き手を迷わせずにグルーヴへ引き込む。Aメロの時点ですでに前傾姿勢の曲で、Bメロを経てサビに向かう過程でも、テンポを緩めることなく畳みかけるように展開していく。バラードやミディアムテンポの楽曲が多いglobeのカタログの中で、この曲は明確に「踊れる曲」「動きたくなる曲」に属している。ダンスパートをKABAちゃんが担当していたという記録があることも、この曲が持つ身体性の強さを裏づけている[1]。コーラスには華原朋美が参加しており、KEIKOのボーカルに厚みを添える形で、曲全体のスケール感を押し上げている[1]。1番と2番でアレンジの引き算・足し算がどう変化しているかを聴き比べると、音数の少ないヴァースから徐々に音が積み上がり、サビで一気に開放されるという典型的な小室サウンドの構造美が見えてくる。派手なだけでなく、緻密に計算された起伏がある。だからこそ、アルバムに埋もれず、あえてシングルとして独立させる価値があると判断されたのではないか。曲そのものの強度が、リリース戦略という異例の判断を後押ししたのだと思う。

喫煙というモチーフに込められた、当時としての挑戦

歌詞の内容にそのまま踏み込むことは避けるが、この曲が「喫煙者」そのものをモチーフに据えたという点は、当時の音楽シーンの中でも大胆な選択だったと伝えられている[1]。恋愛の高揚や別れの痛みを描くのではなく、タバコをくわえる仕草や、そこに宿る孤独と強さの入り混じった感情を切り取る。派手なラブソングが並ぶ90年代のヒットチャートの中で、こうした題材をあえて選んだこと自体が、この曲の歌詞世界の独自性を支えている。小室哲哉とMARCの共作というクレジットも興味深い。MARCはglobeのメンバーであり、ラップやトラックメイクの領域で存在感を発揮してきた人物だが、この曲では作詞のパートナーとしてクレジットされている[1]。二人の視点が交差することで、単なる恋愛描写に終わらない、都会的でどこか乾いた距離感のある言葉選びが生まれているように感じる。さらに興味深いのは、小室哲哉が当時、スタジオへ向かう道すがら、ハローキティのグッズを持つ女性を何人も見かけたことから、「キーホルダー」や「白い子猫」といった言葉を歌詞に取り入れたという逸話が残っている点だ[1]。壮大なテーマを扱う曲であっても、着想の出発点は日常の中のささやかな観察だったというのは、作家としての小室哲哉の一面をよく表している。大きな物語を作る前に、まず街を歩く人々の手元にあるものを見ている。そうした視線の低さが、聴き手の生活実感と地続きの言葉を生み出しているのだと思う。喫煙という重くなりがちなモチーフを扱いながらも、歌詞全体が説教くさくならず、若い女性の内面の揺れとして描かれている点も、この曲の歌詞がただの社会的メッセージソングに終わっていない理由だろう。自由でありたい気持ちと、それを許さない周囲の視線との間で揺れる心情は、時代を経た今の耳で聴いても、決して古びていない普遍的なテーマとして響く。

公式MVが伝える、90年代globeのライブ感

この曲には公式ミュージックビデオが存在し、globe公式YouTubeチャンネルで現在も視聴することができる。90年代のglobeのMVといえば、小室哲哉、KEIKO、MARK PANTHERの3人が織りなすステージパフォーマンスや、当時最先端だった映像処理を組み合わせたスタイルが特徴的だった。この曲のMVも、そうした時代のglobeらしい熱量を感じさせるつくりになっている。派手な物語仕立てというより、曲が持つビートとダンスパフォーマンスをそのまま見せることに重心が置かれている印象で、音源で感じたリズムの推進力が、映像の中でも途切れることなく続いていく。KEIKOのボーカルパフォーマンスと、当時のダンスシーンの空気感が同時に閉じ込められている点は、90年代のJ-POPを知る世代にとっても、それを知らない世代にとっても、貴重な記録になっている。もっとも、物語性や映像美という観点で見ると、同時代の他のヒットMVと比べて突出した演出があるわけではなく、あくまで曲とパフォーマンスを届けることに主眼が置かれた、ある意味で実直なつくりだと感じる。だからこそMVの評価は「曲がいい」「歌詞がいい」と並べたときに、主視点として選ぶにはもう一歩という評価に落ち着く。とはいえ、公式チャンネルに今も残っていること自体が、この曲がその後も一定の需要を持ち続けてきた証でもある。YouTubeで偶然この曲に出会った人が、そのままglobeというグループの歴史全体に興味を持つきっかけになるという意味では、十分に機能しているMVだと言えるだろう。アルバム先行収録というリリース手法の逆算性、喫煙というモチーフに込めた挑戦、そしてライブ感のあるMV。この三つが揃って初めて、「Anytime smokin' cigarette」という一曲が持つ立ち位置が見えてくる。派手なラブソングが並ぶ90年代のヒットチャートの中で、あえて異色の題材と異色のリリース戦略を選んだこの曲は、globeというグループが単なる王道路線だけでなく、実験的な挑戦も併せ持っていたことを今に伝えている。

参考リンク

曲が生まれた順番を逆にたどってみると、そこに込められた意図が見えてくることがあります。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。