「genesis of next」は、小室哲哉・KEIKO・マーク パンサーの3人からなるユニットglobeが、2001年12月5日にリリースした25枚目のシングルである。作詞は小室哲哉とMARC(マーク パンサー)、作曲・編曲は小室哲哉が手がけている。この曲は同年放送のTV東京系アニメ「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」のエンディングテーマとして起用され、カップリングの「What's the justice?」がオープニングテーマを務めた。同じアニメの主題歌を1組のアーティストが両方担当するという構成そのものが、当時のglobeが背負っていた存在感を物語っている。両曲はのちにオリジナルアルバム「Lights」にも収録され、シングルとしてはオリコン週間チャートで8位を記録した。タイトル曲のオリジナルミックスは約10分に及ぶ長尺で、それまでglobeのシングルの中で最も長かった「DON'T LOOK BACK」をさらに上回る規格外の一曲だったことも、当時のリリース情報から確認できる。CDを買うとまず驚かされるのが、この長さそのものだったはずだ。1曲でアルバムの主要曲並みの時間を占めるという構成は、シングルという形式そのものへの挑戦でもあった。
約10分を飽きさせない、小室哲哉の設計力
「genesis of next」を最初に聴いたとき、多くの人がまず気になるのはその長さだろう。オリジナルミックスは9分台後半に及び、通常のJ-POPシングルの尺の3倍近い。だが実際に通して聴くと、長さを感じさせない構成になっていることに気づく。イントロから曲全体を貫くのは、当時のユーロトランスやハードトランスの語法を取り入れたシンセサイザーの音像だ。四つ打ちのビートの上に、上昇と下降を繰り返すシンセのフレーズが重なり、そこにKEIKOのボーカルが乗ることで、無機質になりがちな音像に体温が生まれる。小室哲哉は1990年代からダンスミュージックのトレンドを貪欲に取り込んできた作家だが、この曲では2000年代初頭のトランスサウンドを、J-POPのシングルという枠組みの中に大胆に持ち込んでいる。Aメロで抑えた展開を作り、サビで一気に音数を増やし視界を開く。この起伏の作り方自体は小室哲哉の得意とする手法だが、「genesis of next」では、その起伏を一度だけでなく何度も繰り返し、聴き手を長い時間の中で飽きさせない工夫がなされている。中盤の展開部では、四つ打ちのビートを一度落ち着かせ、シンセのアルペジオだけを残す瞬間がある。ここで曲全体にひと呼吸置くことで、後半の再び高まっていく展開がより効果的に響く。約10分という長さは、単に曲を引き延ばした結果ではなく、起承転結を何度も繰り返すための必要な尺だったのだと、通して聴くと納得できる。カップリングの「What's the justice?」がアニメのオープニングという速く駆け抜ける役割を担っているのに対し、この「genesis of next」はエンディングとして、物語の余韻をゆっくりと受け止める役割を担っている。その対比を意識して聴くと、小室哲哉がこの2曲をセットで設計したことの意味がより深く伝わってくる。テンポの緩急、音数の増減、KEIKOの声の距離感。それらすべてが計算された上で、「長いのに聴かせる」という一曲が成立している。
サイボーグたちの孤独と重なる言葉
この曲の歌詞そのものを長く引用することはしないが、その言葉が置かれている文脈について考えてみたい。「genesis of next」というタイトルは「次なるものの起源」を意味する。アニメ「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」は、人間でありながら人間ではなくなってしまった者たちが、それでも人間らしくあろうとする物語だ。エンディングテーマとしてこの曲が置かれたとき、タイトルの持つ「新しい始まり」という響きは、サイボーグとして生きることになった登場人物たちの、これからの人生を暗示する言葉として機能していたはずだ。小室哲哉とマーク パンサーが共同で書いた歌詞は、具体的な物語描写というより、前を向くことへの意志のようなものを言葉にしている印象がある。過去に何があったかを詳しく語るのではなく、それでも次に進むのだという姿勢が繰り返し立ち上がってくる。この抽象度の高さは、アニメのタイアップ曲としては珍しくない手法だが、同時に、アニメを知らない聴き手にとっても普遍的なメッセージとして届く仕掛けにもなっている。人間らしさを失ったかもしれない登場人物たちの物語と、聴き手それぞれが抱える「もう一度立ち上がる」という感覚が、タイトル一つを介して静かに重なっていく。KEIKOの歌声は、感情を大きく揺さぶるタイプではなく、むしろ抑制の効いた歌い方をする人だ。だからこそ、この曲が持つ「前を向く」という主題が、押しつけがましくならずに届く。声を張り上げて鼓舞するのではなく、淡々と歌うことで、聴き手が自分のペースでその言葉を受け取れる余地が生まれている。トランスというジャンルは本来、高揚感や多幸感を前面に出す音楽だが、この曲ではその高揚感の中に、どこか静かな覚悟のようなものが同居している。それは、歌詞とサウンドの組み合わせによって初めて生まれる感触であり、歌詞だけを取り出しても、曲だけを取り出しても、恐らく同じようには伝わらないものだ。
公式MVが伝える、ユニットとしての佇まい
公式YouTubeチャンネルで公開されている「genesis of next」の映像は、当時のglobeらしい佇まいをそのまま伝えるものになっている[5]。派手なストーリー仕立てのMVというより、3人のパフォーマンスと当時の映像美学を軸にした構成で、小室哲哉のサウンドプロデューサーとしての存在感、KEIKOの抑えたボーカル表現、マーク パンサーのMCとしての個性が、それぞれの役割のまま画面に映し出されている。globeというユニットは、メンバー3人が対等な立ち位置で音楽を作るというより、小室哲哉のサウンドを中心に、KEIKOの歌声とマーク パンサーの言葉やラップが加わる、役割分担のはっきりしたユニットだった。MVを見ると、その役割分担が映像の中でも維持されていることがわかる。派手な物語性やロケーションの奇抜さで魅せるタイプの映像ではなく、曲が持つトランス的な高揚感を、当時最先端だった映像処理や照明効果で補強するタイプの作りだ。曲そのものが持つ情報量が多いぶん、MVは曲の邪魔をしないという判断がなされているようにも見える。約10分の曲を映像込みで通して見ると、音だけで聴いたときよりも、3人のユニットとしての一体感がより明確に伝わってくる。ただし、物語性という点では、歌詞やサウンドが持つ「次への意志」というテーマを映像がどこまで深めているかというと、あくまで曲の魅力を補強する役割にとどまっている印象もある。それでも、当時のglobeの活動そのものを記録した映像として見る価値は十分にあり、曲を聴いたあとにこの映像を見ることで、リリース当時の空気がよみがえってくるはずだ。
25枚目のシングルという到達点
globeは1996年のデビュー以来、数々のミリオンヒットを生み出してきたユニットである。「genesis of next」がリリースされた2001年は、デビューから5年以上が経過し、25枚目のシングルという節目を迎えていた時期にあたる。オリコン週間チャートでは8位という結果だったが、この数字だけでこの曲の価値を測るのは早計だろう。約10分という異例の長尺、アニメのオープニングとエンディングを1組で担うという構成、そして2000年代初頭のトランスサウンドを大胆に取り入れた挑戦。これらはすべて、すでに大きな成功を手にしていたユニットだからこそ許された実験だったとも言える。表題曲だけでなくカップリングまで含めて聴くと、この時期のglobeが、単なるヒット曲量産の段階を越えて、音楽的な挑戦を続けていたことがよくわかる。サウンド面での実験精神と、アニメタイアップというポップな入口が両立している点も、この曲の面白さだ。子供から大人まで観ていたアニメの主題歌でありながら、中身は当時最先端のダンスミュージックの語法を存分に取り入れている。この両立の仕方こそ、小室哲哉というプロデューサーが長年培ってきたバランス感覚そのものではないかと思う。派手さや流行だけを追いかけるのではなく、聴き手を飽きさせない構成力と、時代の音を的確に取り入れる嗅覚。その両方が同居しているからこそ、20年以上を経た今聴いても、この曲は古びて聴こえない。
参考リンク
- [1] genesis of next - Wikipedia
- [2] globe (アルバム/ユニット) - Wikipedia
- [3] genesis of next / globe - VGMdb
- [4] genesis of next - 歌ネット
- [5] globe / genesis of next(globe公式YouTube)
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