「still growin' up」は、globeが1999年9月8日に発表した18thシングルである[1]。日本コカ・コーラのテレビCMソングとして起用され、KEIKO自身がその広告に出演したことでも話題になった[1][2]。オリコン週間チャートでは4位、1999年9月度の月間チャートでは11位を記録し、日本レコード協会のゴールドディスクにも認定されている[1]。作詞はKEIKOとMARC PANTHER、作曲・編曲・プロデュースを小室哲哉が手がけた[1]。8cmCD規格でリリースされたシングルとしては、globeにとって最後の一枚になったという記録も残っている[1]。この曲は、当時制作が進んでいたベストアルバム「CRUISE RECORD 1995-2000」の先行シングルという位置づけでもあった。同アルバムはのちに二重ミリオンを達成する大ヒット作になっている[1]。カップリングには、前作シングル「MISS YOUR BODY」のリミックスが収録された[1]。デビューから数年を経て、すでに「DEPARTURES」や「FACE」といった大ヒット曲を世に送り出していたグループが、あえてこのタイミングで見せた曲づくりの方向性に、この記事では注目したい。
足し算をやめて、4つ打ちに戻るという判断
「still growin' up」を聴いてまず感じるのは、余計な装飾を削ぎ落としたような、まっすぐな体幹の強さだ。当時、小室哲哉自身がこの曲について、KEIKOの伸びやかなボーカル、MARC PANTHERのラップ、そしてシンプルなメロディラインという組み合わせこそが「globeの基本形」だと語ったと伝えられている[1]。デビュー当初の音づくりを思わせる4つ打ちのハウスミュージック的なリズムが、曲全体を貫いている[1]。「DEPARTURES」や「FACE」のように、壮大なバラード性やドラマ性で聴き手を包み込む曲とは、明らかに違う設計だ。イントロから律儀に刻まれるキックの重心、そこに絡むシンセの粒立ち。派手な転調やドラマチックなブリッジを挟まず、淡々とビートを積み重ねながら、サビでKEIKOの声がすっと抜けていく。この抜け方が気持ちいい。足し算のアレンジで感情を煽るのではなく、引き算の中で曲の芯を見せるという作り方は、ヒットを連発したあとのグループがあえて選ぶには、勇気のいる判断だったのではないか。すでに大きなヒットの型を持っているグループが、その型をなぞるのではなく、自分たちの原点であるダンスミュージックに立ち返る。それは後退ではなく、むしろ「まだ成長の途中である」という、このタイトルそのものが体現している姿勢に見える。MARC PANTHERのラップパートは、饒舌に言葉を積み上げるタイプではなく、リズムの一部として機能するタイプの乗せ方だ。KEIKOの歌声と対話するというより、ビートの輪郭を太くする役割を担っている。1番と2番、そしてラストサビにかけて、劇的な展開の変化があるわけではないのに、聴き終えたときには不思議な高揚感が残る。それは、曲の構造そのものが持つ推進力によるものだろう。イヤホンで聴くと、キックの粒とベースラインの絡み方に細かな工夫があることに気づく。派手な音数で押すのではなく、必要な音だけを的確な場所に置く。そういう職人的な引き算の仕事が、この曲を何度聴いても飽きさせない理由になっている。
「成長し続ける」というタイトルが指す、生活の中の時間
この曲の歌詞に丸ごと触れることはしないが、そのかわりに、タイトルが指し示している時間について考えてみたい。「still growin' up」は、直訳すれば「まだ成長し続けている」という意味になる。恋愛の駆け引きや別れの痛みを歌う曲ではなく、日々の暮らしの中で立ち止まりそうになりながらも、それでも前を向こうとする気持ちが、言葉の端々に滲んでいるように聴こえる。KEIKOとMARC PANTHERが共作したという歌詞であることも、この曲の手触りに関係しているのかもしれない[1]。作曲・編曲を小室哲哉が一手に担う一方で、言葉の部分は歌う本人たちの手に委ねられている。だからこそ、誰かに向けて書かれたラブソングというより、自分自身に語りかけるような言葉の距離感が生まれているのではないか。コカ・コーラのCMソングとして起用されたことも、この曲の聴かれ方を考えるうえで無視できない[1][2]。テレビCMという短い尺の中で流れる音楽は、物語を丁寧に説明する余裕がない。その分、曲そのものが持つ推進力や、サビの一節が持つ生活実感の強さが、そのまま曲の印象を決めることになる。「成長し続ける」という前向きな言葉は、CMというフォーマットの中で、日常を励ますメッセージとして機能したはずだ。歌詞の物語性や比喩の深さという点では、globeの他の楽曲と比べて突出しているわけではないかもしれない。それでも、大きなヒットを重ねてきたグループが、あえて「まだ成長の途中だ」と歌う姿勢そのものに、飾らない誠実さがある。聴く側の年齢や状況によって、この言葉の受け取り方は変わるだろう。20代で聴けば前向きな応援歌に、30代、40代で聴き直せば、立ち止まることへの静かな肯定として響くかもしれない。説明しすぎない言葉だからこそ、生活の中で何度も再生される余地が残されている。
MVの中に差し込まれる、別の曲の記憶
この曲のミュージックビデオには、少し変わった仕掛けがある。曲の途中に、globeの別のミュージックビデオ「Is this love」の映像が、唐突に挿入される場面があるのだ[1]。通常、MVは一つの曲の世界観を最初から最後まで一貫して描くものだが、このMVはその前提を静かに裏切ってくる。別の曲の記憶が、曲の途中に割り込んでくる感覚。それは、油断していると見過ごしてしまうほど「唐突」な編集であり、意図を説明する公式なコメントは見当たらないが、この構成そのものが一つの語りかけになっているように思える。ヒットを重ねてきたグループの歴史は、一曲ごとに独立して存在しているのではなく、互いに響き合いながら積み重なっていくものだ。「still growin' up」というタイトルが「まだ成長し続けている」という意味を持つことを踏まえると、過去の曲の映像が現在の曲の中に紛れ込んでくるという構成は、成長がまっすぐな直線ではなく、過去を抱えながら進んでいくものだという実感と、どこかで重なって見える。曲そのものが4つ打ちのシンプルな構造に立ち返っている一方で、MVの編集はむしろ複雑な時間の重ね方をしている。この対比が面白い。派手なドラマ仕立てのMVではないぶん、初見のインパクトという点では大人しく見えるかもしれないが、globeというグループの歩みを知ったうえで見返すと、この「唐突な挿入」の意味が変わって見えてくる。曲の強さを前提としながらも、MVという入口から見えてくる物語性も、この曲の魅力を確実に補強している。だからこそMVがいいの評価も★4に置いた。それでも、この記事で最も深く語れるのは、やはり原点回帰という曲そのものの構造だと考え、主視点は曲がいいのままとした。
参考リンク
成長の途中であり続けるという言葉が生活の中で意味を変えていくように、家や土地にも、時間とともに姿を変える物語が残っています。
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