2015年発売のオリジナルアルバム『Journey of a Songwriter〜旅するソングライター』に収録された「夜はこれから」は、浜田省吾というキャリアの長いアーティストが、還暦を過ぎてなお新しい音楽性に挑んだ楽曲として、音楽メディアで話題になった一曲だ。英題は「The Tokyo Midnight Anthem」と伝えられており、夜のクラブシーンを思わせる世界観を持つ。ミュージックビデオでは、浜田省吾自身がクラブのDJに扮して登場するという、これまでのイメージとは一線を画す映像が展開される。長年ロックやバラードで聴かせてきたアーティストが、こうしたエレクトロニックな要素に挑む姿には、単なる若作りではない、表現者としての柔軟さが表れている。
還暦を過ぎて挑んだ、新しい音の実験
「夜はこれから」が収められたアルバム『Journey of a Songwriter〜旅するソングライター』は、浜田省吾17枚目のオリジナルアルバムとして2015年に発表された。長年、ロックやフォーク、バラードといった王道の音作りで多くのファンを獲得してきたアーティストが、このアルバムでは打ち込みを取り入れたエレクトロニックなアプローチにも踏み込んでいる。「夜はこれから」はその象徴的な一曲として、ロッキング・オンなどの音楽メディアでも取り上げられた。ベテランアーティストが自分のスタイルに安住せず、新しい音の実験に踏み出す姿勢は、決して当たり前のことではない。長く歌い続けてきたからこそ、変わらない部分と変えていく部分を、意識的に選び分けているのだろう。
DJに扮した、意外性のあるMV
このミュージックビデオの最大の見どころは、浜田省吾自身がクラブのDJに扮して登場する構成にある。ギターを抱えたロッカーとしてのイメージが強いアーティストが、ターンテーブルの前に立つ姿は、これまでの作品を知る人ほど新鮮に映るはずだ。ロッキング・オンの記事でも「DJ浜田省吾が盛り上げる」という見出しで紹介されており、この曲がアーティスト本人にとっても、遊び心を持って取り組んだ挑戦であったことがうかがえる。ショートバージョンとして公開されたこの映像は、フルサイズのMVよりもテンポよく、DJブースでの浜田省吾の表情の変化を短い時間で切り取っている。
夜の街を描く言葉
歌詞を丸ごと引用することは避けるが、この曲が描いているのは、これから夜が本格的に始まっていくという高揚感と、その先にある解放感のようなものだと感じられる。英題「The Tokyo Midnight Anthem」が示すように、東京という都市の夜を舞台にした世界観が背景にあるようだ。長年、日本各地の街や人生を歌ってきた浜田省吾が、あえて「夜」「クラブ」という限定的な情景を選んで描いたことには、これまでとは違う角度から都市や人間を見つめ直そうとする意図が感じられる。
変化を恐れないという姿勢
東京で働いていた頃、夜の街に繰り出すことにどこか背徳的な高揚感を覚えていた時期があった。仕事終わりの解放感と、まだ何かが始まるかもしれないという期待。「夜はこれから」というタイトルそのものが、その感覚を思い出させてくれる。浜田省吾のような、すでに確固たるスタイルとファン層を持つアーティストが、あえて自分の型を崩してでも新しい表現に挑む姿は、年齢を重ねることが挑戦をやめる理由にはならないのだと教えてくれる。
ジャンルを越えるという勇気
ロック、フォーク、バラードといった枠組みの中で長年評価されてきたアーティストが、エレクトロニックミュージックという異なるジャンルに踏み込むとき、そこには常に賛否が伴う。従来のファンからは戸惑いの声が上がるかもしれないし、新しいジャンルの聴き手からは本物の挑戦として受け止められないかもしれない。それでも「夜はこれから」がこうして一つの作品として世に出されたことは、浜田省吾自身が、そうした賛否を承知の上で、あえて未知の領域に踏み出す価値を選んだということを示している。ジャンルという枠を守ることよりも、その時々の自分が本当に鳴らしたい音を優先する。そういう作り手としての矜持が、この一曲には静かに宿っているように感じる。
磐田で思う、変わらないための変化
介護や不動産の仕事をしていると、長年同じやり方を続けてきた人が、時代の変化に合わせて少しずつやり方を変えていく場面に出会うことがある。頑固に同じ方法にこだわることが誠実さではなく、むしろ本質を守るために、あえて表面のやり方を変える柔軟さが必要な場面は多い。「夜はこれから」で見せた浜田省吾の実験精神は、そういう「変わらないために、あえて変わる」という姿勢と重なって見える。この曲を聴くたびに、自分もまだ新しいやり方を試していいのだと、背中を押されるような気持ちになる。
『Journey of a Songwriter』というアルバム全体の中で
「夜はこれから」が収められたアルバム『Journey of a Songwriter〜旅するソングライター』というタイトルそのものが、このアルバム全体のコンセプトを象徴している。長年一つの場所に留まらず、音楽的な旅を続けてきたソングライターとしての自負が、このタイトルには込められているのだろう。アルバムの中には、これまで通りのロックやバラードも収められている一方で、「夜はこれから」のようなエレクトロニックな挑戦も並んでいる。一枚のアルバムの中に、変わらない部分と変わっていく部分が同居しているという構成そのものが、キャリアを重ねたアーティストの成熟の形なのだと感じる。過去の代表曲だけを繰り返し歌うのではなく、常に新しい旅を続けようとする姿勢が、この一曲にも表れている。長く第一線で歌い続けてきたアーティストほど、過去の成功体験に頼ってしまう誘惑は大きいはずだ。それでもなお新しい挑戦を選び続けるという判断そのものが、聴き手に対する誠実さの表れなのだと感じる。
参考リンク
- [1] 夜はこれから ミュージックビデオ公開! | ソニーミュージックオフィシャルサイト
- [2] DJ浜田省吾が盛り上げる!最新アルバムから"夜はこれから"のMVを公開 - rockinon.com
- [3] 夜はこれから - 歌ネット
夜がこれから始まるように、人生にも何度でも新しい始まりがあります。
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