ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=IV7usfiEbms
確認した動画: ケツメイシ「友よ ~ この先もずっと…」(ケツメイシ公式チャンネル公式MV)

こんな友情を大切にできる生き方をしたかったなぁ。この曲を聴き返すたびに、そんな思いが静かに浮かんできます。ケツメイシ「友よ ~ この先もずっと…」は、2016年4月20日に発売された、インディーズ・メジャー通算32枚目のシングルです[1]。東宝系配給の劇場版『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』(2016年4月16日公開)の主題歌として書き下ろされました[2]。作詞はケツメイシ、作曲・編曲はケツメイシに田尻知之氏・本澤尚之氏が加わって手がけたと伝えられています[1]。子ども向けアニメ映画の主題歌でありながら、大人になってから聴くと胸に響く言葉が多い曲だと感じます。

大石セレクション:MVがいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★☆☆
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★★★

選定理由:この曲を語るうえで外せないのが、お笑いトリオ・ダチョウ倶楽部を起用した公式ミュージックビデオである。友情という曲のテーマに、体を張ったリアクション芸と、家族団らんや後輩芸人との時間を映すプライベートな一面を重ねた構成は、笑いと情感が同居する独特の説得力を持つ[3]。何より、2016年公開のこのMVが2022年5月、メンバーだった上島竜兵さんの訃報をきっかけに再び多くの人に見られ、動画再生ランキングで首位に返り咲くという出来事が実際に起きている[4][5]。曲や歌詞の魅力も高いが、映像そのものが「もう一度見たい」と人を動かし、曲との再会を生んだという事実の強さで、主視点はMVがいいに置いた。

メジャーデビュー15周年、クレヨンしんちゃんの主題歌として

ケツメイシがメジャーデビュー15周年を迎えた時期に、この曲は書き下ろされました。クレヨンしんちゃんという、家族と友人の絆を繰り返し描いてきた作品の主題歌にふさわしく、子どもだけでなく、その親の世代にも届くことを意識してつくられた曲なのではないかと感じます。CDジャケットには、原作者の臼井儀人氏とUYスタジオによる描き下ろしイラストが使われ、しんちゃんとケツメイシのメンバーが並んで描かれています[2]。初回盤にはMVと振り付けビデオを収めたDVDが付属し、「動く!しんちゃん×ケツメイシ ふりふりおシリしおり」という特典も用意されました[2]。単なるタイアップ曲としてではなく、映画の世界観とグループの個性を丁寧にすり合わせて作られた一曲だったことが、こうした周辺情報からもうかがえます。オリコン週間シングルランキングでは最高12位、月間では38位、Billboard JAPANの年間Hot 100では31位に位置づけられたと伝えられています[1]。派手な首位獲得ではなく、じわじわと長く聴かれ続けた曲だったのだと思います。

ケツメイシの楽曲は、ラップパートとメロディアスなサビを行き来する構成が特徴的なグループですが、この曲でもその往復が生きているように感じます。言葉を畳みかけるように連ねるパートと、歌い上げるように伸びやかに響くサビとの対比が、友情という一続きのテーマを、異なる温度で二度語り直しているように聴こえるのです。ビートは重すぎず、家族向け映画の主題歌らしく開放的な響きを保ちながらも、韻を細かく踏んでいく言葉運びには、ケツメイシというグループが積み重ねてきたラップの手数の多さがにじんでいるように思います。サビに向けて音数が少しずつ整理され、言葉がゆっくりと伸びていく展開は、慌ただしい日常から、大切な誰かのことをふと思い出す瞬間へと、聴き手の意識を静かに切り替えていくような働きをしているように聴こえます。ただし、この曲の魅力の中心は、突出したメロディの独自性や劇的な展開にあるというより、聴きやすさと親しみやすさを保ったまま友情というテーマを素直に運んでいく手堅さにあると感じます。何度も聴き返したくなる強い引力という点では、歌詞やMVの持つ力の方が勝っているように思うため、曲そのものの評価は中程度に置きました。

友情という一続きのテーマを歌う言葉

この曲の歌詞に丸ごと触れることはしませんが、そのかわりに歌詞が描いている時間と関係性について考えてみたいと思います。歌詞は、若い頃をともに過ごした友人との関係が、大人になるにつれて疎遠になっていく現実を見つめながら、それでも変わらずにいたいという願いを「この先もずっと」という言葉に込めているように聴こえます。ケツメイシというグループ自体、メンバー4人が長年の友情を軸に活動を続けてきたバンドです。だからこそ、この曲が歌う友情の永続性には、単なる理想論ではない、実感のこもった重みがあるように聴こえます。ある解説記事は、この曲について「大人は前が見えねェのではないか」という指摘とともに、年を重ねるにつれて友人の数が減っていく中で、変わらずそばにいてくれる友人の価値を描いていると読み解いています[6]。映画『爆睡!ユメミーワールド大突撃』が夢の世界を題材にしていることと呼応するように、歌詞には夢や記憶を共有し続けたいという願いを思わせる表現も見られると指摘されています[6]。転勤や異動、結婚や子育てのタイミングで疎遠になっていく友人関係は、誰しも一度は経験するのではないかと思います。連絡を取ろうと思えばいつでも取れるはずなのに、日々の忙しさの中で後回しにしてしまう。そうしているうちに、共有できる話題や時間の感覚が少しずつずれていき、気づけば長く連絡を取っていない相手ができてしまう。この曲の歌詞は、そうした後回しの積み重ねの先に何があるのかを、説教くさくならない言葉選びで問いかけてくるように感じます。デビュー15周年という節目に、あらためて「友」というテーマに正面から向き合ったこと自体、このグループにとって原点回帰のような意味合いがあったのではないでしょうか。

ダチョウ倶楽部を起用した公式MVと、2022年の再会

この曲を語るうえでどうしても外せないのが、公式ミュージックビデオである。友情というテーマに合わせて起用されたのは、お笑いトリオのダチョウ倶楽部だった。スーパースローモーションで撮られたリアクション芸のシーンに加え、家族団らんや後輩芸人と過ごす時間といったプライベートな一面も収められた、笑いと情感が同居するドラマチックな作品に仕上がっている[3]。体を張った芸で笑いを届けてきた3人が、友情という真面目なテーマの映像に出演することで、かえって曲の言葉に重みが加わる。この意外性そのものが、MVの完成度を支えているように感じます。そして2022年5月、この曲は発売から6年を経て、思いがけない形で再び大きな注目を集めることになりました。動画再生ランキングで、公開から数年が経っていたこの曲が急上昇し、2022年5月18日付で39位に再登場した後、5月23日付では13位まで順位を上げ、2週連続で1位を記録したと報じられています[4][5]。再生回数も、190万回台から417万回台へと急激に増加したと伝えられています[4]。この急上昇のきっかけは、MVに出演していたダチョウ倶楽部のメンバー、上島竜兵さんの訃報だったと報じられています[4][5]。追悼の思いを込めて、多くの人がこのMVをあらためて再生したのではないかと考えられます。一つのミュージックビデオが、時間を超えて誰かの記憶と結びつき、思いがけない形で呼び戻される。この出来事は、曲そのものの評価とは別の軸で、MVという映像作品が持つ力の強さを示しているように思います。ATAWI MUSICが大切にしている「曲との再会」を、これほどはっきりと体現した出来事も少ないのではないでしょうか。

友情を大切にできる生き方への憧れ

友情を大切にできる生き方は、決して自然に手に入るものではなく、意識的に育て、守り続ける努力が必要なのだと、この曲はあらためて教えてくれるように思います。ケツメイシの4人が、デビューから15年という長い時間をともに歩んできたという事実そのものが、この曲の説得力を支えているのではないかと感じます。友情というのは、何もしなくても続くものではなく、日々の小さな選択の積み重ねの先にあるものなのだと、彼らの活動の歴史が静かに語っているように聴こえます。忙しさを言い訳にせず、大切な関係を意識的に守り続けること。「友よ ~ この先もずっと…」が歌うメッセージは、聴く人それぞれの人生の場面で、少しずつ違う重みを持って響くのだと思います。こんな友情を大切にできる生き方をしたかったなぁ、という憧れは、この曲を聴くたびに静かに立ち上がってきます。

参考リンク

ミュージックビデオが時間を超えて誰かの記憶と結びつくように、家や土地にも、誰かが積み重ねた時間が残っています。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。