ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=DZ2GbL7D230
確認した動画: 吉川晃司「Lucky man」【Official Music Video】(動画タイトルに公式表記あり。Warner Music Japan公式サイトのニュースページでも同MVのフル尺公開が告知されており、公式に近い信頼性が確認できる。ただし本タスクではチャンネル運営元の完全な一次確認までは行っていないため、その旨を正直に記載する)

スナック菓子のCMソングと聞くと、つい軽いものを想像してしまう。けれど「Lucky man」を初めて聴いたとき、私はそのイメージを裏切られた。これは、還暦を過ぎてなお現役でロックを鳴らし続ける男が、真正面から放った一曲だ。かっぱえびせんの「やめられない、とまらない」というキャッチコピーは、ここでは単なる商品の惹句を超えて、生き方そのものの比喩に変わっている。何かに衝き動かされて、止まらずに走り続けること。それを「幸運」と呼べる人間が、いったいどれだけいるだろうか。吉川晃司という人は、その稀有な一人なのだと思う。

大石セレクション:曲がいい ★★★★☆

  • 曲がいい:★★★★☆
  • 歌詞がいい:★★★☆☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:「Lucky man」はタイアップ曲という制約の中にありながら、イントロのギターリフから終始一貫してロックンロールの推進力を失わない。サビでの声の張り方、バンドサウンドの粒立ちの良さは、キャリア40年近くを重ねたアーティストが「今も現役である」ことを音そのもので証明している。歌詞は「もっと やめられない 無制限のPassion」という言葉に象徴される衝動の表現として十分に魅力的だが、タイアップ商品の惹句を軸にした構成であるため、言葉の余白や物語性という点では曲の推進力ほどの奥行きは出しにくい。MVについては、Warner Music Japan公式サイトでフル尺公開が告知され、動画タイトルにも公式表記があることから一定の信頼性は確認できたが、演出面では本人の歌唱シーンを中心とした構成にとどまり、映像表現そのものが曲の解釈を大きく広げるタイプの作品ではないと判断した。そのため、主視点は曲そのものが持つ推進力に置いている。

かっぱえびせんが引き出した、還暦ロッカーの本気

「Lucky man」は、カルビーの「かっぱえびせん」のWeb CMソングとして書き下ろされた楽曲で、配信限定シングルとして2020年2月7日に配信がスタートした[1][4]。フル尺のミュージックビデオは同年4月6日に公開されている[2]。作詞は松井五郎、作曲は吉川晃司自身の手によるものと伝えられている[3]。編曲者についての詳細なクレジットは、今回確認できた資料の範囲では明記されておらず、断定は避けたい。このタイアップの面白いところは、単に商品名を歌詞に織り込んだだけの企業ソングに終わっていない点だ。「もっと やめられない 無制限のPassion/ずっと とまらない あふれるTension」というフレーズは、かっぱえびせんの定番コピー「やめられない、とまらない」を下敷きにしながら、それをロックンロールの衝動へと翻訳している[1]。菓子のキャッチコピーと、ロッカーの生き様が、驚くほど自然に重なり合っている。

吉川晃司は1984年、シングル「モニカ」と映画『すかんぴんウォーク』で同時デビューした。渡辺プロダクションが総力を挙げて売り出した「ニュータイプアイドル」という触れ込みだったが、本人はその枠に収まることを早くから拒み、アイドル歌謡とロックの境界を自ら壊しにいったアーティストとして知られている[5]。1989年には布袋寅泰とロックユニットCOMPLEXを結成し、「BE MY BABY」などのヒットを飛ばした後、1992年以降はソロ活動を再開し、以降30年以上にわたってロック路線を貫いてきた[5]。「Lucky man」が配信された2020年、吉川晃司はすでにデビューから36年が経過していた年でもある。それでもなお、企業タイアップの現場で衝動そのものを歌い切れる。そのことの意味は、決して小さくない。

止まらない衝動を、ためらわず「幸運」と呼ぶ強さ

この曲の核にあるのは、爆発的なギターリフと、それを追いかけるように前のめりに刻まれるビートだと思う。イントロが鳴った瞬間から、もう後戻りはできない。そんな体感がある。Aメロで抑えた熱量を、サビで一気に解き放つ構成は、吉川晃司がキャリアを通じて培ってきたライブでの見せ方そのものだ。声を張り上げる瞬間の伸びやかさ、少し掠れる質感、そのどちらもが「作られた若さ」ではなく、積み重ねてきた時間の上に成立している若々しさだと感じる。無理に若作りをしているのではなく、年齢を重ねてなお衝動を失わないことそのものが、この曲の説得力になっている。

タイトルの「Lucky man」は、直訳すれば「幸運な男」だが、この曲が歌っているのは、宝くじに当たるような棚ぼたの幸運ではないはずだ。むしろ、何かに夢中になれること、止まらずに走り続けられる情熱を持てていること自体を、幸運だと言い切っている。そう捉えると、この言葉の選び方には静かな凄みがある。多くの人は、歳を重ねるにつれて情熱の火を小さくしていく。守るものが増え、リスクを避けるようになり、衝動よりも安定を選ぶようになる。それ自体は悪いことではない。けれど、その火を消さずに持ち続けられている人がいるとしたら、それは確かに「運がいい」という言葉がふさわしいのかもしれない。菓子のCMソングという軽やかな入口から、こうした人生観にまで思考を運んでしまう。それが、この曲の隠れた強さだと思う。

歌詞とMVに見る、衝動の輪郭

歌詞をそのまま書き写すことはしないが、その方向性には触れておきたい。「Lucky man」の言葉は、難解な比喩を避け、衝動や情熱をストレートな英単語――PassionやTension――に託して繰り返し提示してくる[1]。この直球さは、タイアップ曲としての分かりやすさを保ちながらも、吉川晃司自身の「飾らずに本気をぶつける」というスタンスとよく重なっている。ただし、歌詞そのものの物語性という点では、聴くたびに新しい発見が生まれるタイプの奥行きまでは持っていないというのが正直な印象だ。むしろこの曲は、言葉よりも声とビートの説得力で聴かせる曲だと感じる。

ミュージックビデオについては、Warner Music Japanの公式サイトでフル尺公開のニュースが報じられ、動画タイトルにも「Official Music Video」の表記がある[2]。この点で一定の公式性は確認できたと言える。映像の中心は、吉川晃司自身がバンドとともに演奏し歌う姿であり、過剰な物語や凝った演出よりも、パフォーマンスそのものの熱量を伝えることに主眼が置かれているように見える。派手な仕掛けが少ない分、映像を見ることで曲の解釈が大きく広がるタイプのMVではないが、還暦を過ぎてなお全力で声を張る姿を映像で確認できること自体には、確かな説得力がある。

磐田で数えた、小さな「Lucky」の記憶

この曲を聴きながら、私は東京で働いていた頃のことをよく思い出す。当時の私は、目の前の仕事をこなすことに精一杯で、自分の人生が「運がいい」かどうかなど、考える余裕もなかった。磐田に戻り、介護と不動産という、人の暮らしの終わりと始まりに深く関わる仕事に就いてから、ようやく「幸運」という言葉の重さが、少しずつ分かるようになってきた気がする。

介護の現場では、ご本人やご家族から「ここまで大きな病気もせず暮らせたのは運がよかった」という言葉を、幾度となく聞いてきた。不動産の相談では、長年空き家のままだった実家を、思い切って手放す決断をされた方が「肩の荷が下りて、これからは運が向いてくる気がする」と話してくれたこともある。どちらも、劇的な出来事ではない。日々を淡々と重ね、時にはためらいながらも一歩を踏み出した、その先にある小さな安堵だ。「Lucky man」が歌う幸運も、きっとそれに近いものだと思う。何かに夢中になれること、今日も変わらず動き続けられること、大きな後悔なく一日を終えられること。派手な当たりくじではなく、そうした地味な積み重ねの先にこそ、本当の意味での「運のよさ」があるのではないか。この曲を聴くたびに、私はそんなことを考えている。

参考リンク

やめられない、とまらない衝動を持ち続けられることも、日々を淡々と重ねられることも、どちらも一つの幸運です。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。