ページ作成日: 2026年7月3日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=ony539T074w
確認した動画: King Gnu - 白日(King Gnu official YouTube channel)

aikoさんとのコラボのカブトムシからの再評価。本当に井口さん天才です。King Gnuのボーカル、井口理さんの声に、私もあらためて心を掴まれたひとりです。aiko「カブトムシ」の記事でも書きましたが、深夜ラジオでのデュエットをきっかけに、井口さんの声の表現力の幅広さに驚かされました。ロックバンドのボーカルとしての力強さと、繊細な曲を歌うときの柔らかさ。同じ声とは思えないほどの振れ幅を持つ人が、King Gnuというバンドの真ん中に立っている。「白日」を聴くと、そのことをあらためて実感します。この曲は、切迫した現実を歌いながらも、決して湿っぽくならない不思議な透明感を持っています。バンドが持つ演劇的な構成力と、井口さんの声の説得力が組み合わさることで、ただの主題歌を超えた、独立した1曲としての強度が生まれています。

正月返上でこもって作った曲

「白日」は、2019年2月22日に配信リリースされた楽曲で、坂口健太郎主演の日本テレビ系土曜ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』の主題歌として書き下ろされました。King Gnuがこのドラマの主題歌を担当することが各メディアに情報解禁されたのは1月7日。1月クールから放送される作品への書き下ろしオファーだったため、常田大希は2018年末から2019年始にかけて、正月休みを返上し、家に1人こもって楽曲を制作しました。デモを作り、1月9日頃にバンドメンバーを交えて録音を実施。曲の納期が差し迫っていたため、レコーディングスタジオ内で曲を詰めていくという方法が取られ、4日間スタジオにこもって仕上げられたといいます。この曲は後に、2020年1月15日発売のアルバム『CEREMONY』にも収録されました。

正月という、本来は休息のための時間を返上し、締め切りに追われながら仕上げられたこの曲が、これほど完成度の高い1曲になったこと自体、常田大希という作家の力量を物語っています。追い詰められた状況の中でこそ、研ぎ澄まされたものが生まれることがある。この曲の制作背景を知ると、あの緊張感のある曲調にも、また違う説得力が加わります。

思いがけないきっかけで再発見する才能

優れた才能というのは、時に思いがけない入口から再発見されることがあります。King Gnuというバンドの存在はすでに知っていたはずなのに、aikoとのコラボレーションという別の文脈を通して、井口理さんの声に、あらためて心を動かされる。そういう経験は、音楽を長く聴き続けている人ほど、何度も味わうものだと思います。同じ声、同じ才能でも、出会い方や文脈が変わるだけで、その受け取り方はまったく違ってきます。

「白日」という曲自体も、ドラマの主題歌という文脈と、単体の楽曲としての強度の両方を持っています。文脈によって輝きを増す作品と、文脈を離れても独立して成立する作品。優れた楽曲は、たいていその両方を兼ね備えているのだと、この曲を聴くたびに感じます。

磐田で再発見する、才能の多面性

磐田で家や土地の相談を受けていると、ある人の意外な一面を、思いがけない場面で発見することがよくあります。普段は寡黙な方が、家族の話になると饒舌になったり、厳格に見える方が、孫の話をするときだけ表情を崩したり。人の才能や魅力は、ひとつの文脈だけでは捉えきれません。井口理さんの声が、King Gnuというロックバンドの中でも、aikoとのデュエットという場でも、それぞれ違った輝きを見せるように、人にはいつも、まだ見ぬ側面が眠っているのだと思います。

「白日」を聴くたびに、正月を返上してまで作り込まれたこの曲の緊張感と、そこに宿る才能の確かさを思い出します。そして、その才能を、まったく別の角度からもう一度発見させてくれた、aikoとのコラボレーションにも、あらためて感謝したくなります。

ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、思いがけない角度から才能を再発見した記憶を読み直す場所です。