ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://youtu.be/w05Q_aZKkFw
確認した動画: 【公式】キリンジ「エイリアンズ」(MV)【4Kリマスター】KIRINJI/ Aliens(ワーナーミュージック・ジャパン公式YouTube)

キリンジ「エイリアンズ」は、2000年10月12日に発表されたシングルで、同年11月8日発売のアルバム『3』にも収録されている[1][2]。作詞・作曲は堀込泰行が中心となって手がけ、編曲はキリンジと冨田恵一の連名で、プロデュースも冨田恵一が担う布陣だった[2][3]。リリースから四半世紀が経った今も歌い継がれ、2017年にはLINEモバイルのテレビCM「愛と革新。」に、のんの出演とともに起用され、2018年にはNHK BSプレミアムのドラマ『カラスになったおれは地上の世界を見おろした。』の挿入歌として使われた[4][5]。2022年には映画『明け方の若者たち』やHuluオリジナルドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』でも劇中で使用されており、世代を越えて選ばれ続けている曲であることがわかる[5][6]。この記事で確認した映像は、ワーナーミュージック・ジャパンが公式YouTubeで公開している【4Kリマスター】版のミュージックビデオである。音楽ナタリーの報道によれば、これはキリンジのワーナー時代のMV11本をまとめて高画質化し、配信し直した取り組みの一本で、国内アーティストとしては初めての試みだったという[7]。つまり、ここにある映像は新しく撮り下ろされたものではなく、2000年当時のオリジナルMVを、今の画質でもう一度見られるようにしたものだ。

大石セレクション:曲がいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★★
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:この曲の芯にあるのは、冨田恵一が編曲とプロデュースで組み上げた、浮遊感のあるコード運びとグルーヴだと感じる。イントロの入り方からしてすでに「よそ者の視点」を音で表現しており、歌詞の孤独感やMVの映像美を差し引いても、演奏そのものに何度も針を戻したくなる強度がある。歌詞も情景の描き方が見事で星4つ半に近いが、丸ごと言葉で語り切るには曲の構造そのものの完成度が上回る。MVは2000年当時、SPACE SHOWER Music Video Awards 2000のBEST SHOOTING VIDEOを受賞した実力派の作品であり[3]、4Kで蘇った価値も大きいが、あくまで過去作の再提示という性格上、主視点は「曲がいい」に置いた。

冨田恵一が組んだ音、堀込泰行が乗せた「よそ者」の声

この曲を編曲・プロデュースの視点から聴き直すと、冨田恵一という名前の重みに気づかされる。派手なホーンやシンセの主張ではなく、リズム隊とコードワークの端々に、都会の夜特有の湿度と乾きが同居している。イントロの数秒だけで、すでに「ここではないどこか」に連れていかれる感覚がある。Aメロは抑えた温度で始まり、Bメロで少しずつ視界が開き、サビでは劇的に爆発するというより、じわりと景色が変わるように展開していく。派手な転調やドラマチックなブリッジに頼らず、淡々と進みながら気づけば聴き手の感情を動かしている。この、盛り上げすぎない構成にこそ、この曲が四半世紀を経ても古びない理由があるように思う。作詞と作曲を堀込泰行が中心となって手がけたという情報が伝えられている一方で、キリンジという名義そのものが兄弟ふたりの共同作業を前提にしたユニットである点も見逃せない[2][3][8]。誰が何を書いたかという線引き以上に、ふたりの声質や解釈が重なることで生まれる独特の質感が、この曲の骨格を作っている。堀込泰行の声は、力任せに感情を押し出すタイプではない。むしろ、少し距離を置いたまま歌うことで、聴き手それぞれの記憶に入り込む余地を残している。ボーカルが饒舌になりすぎないぶん、演奏隊の仕事がよく見える。ベースラインの動き方、ドラムの手数を絞るタイミング、鍵盤の音色選び。どれも「主張しすぎない」という一点で共通しており、それが結果として、曲全体に上品な浮遊感を与えている。イヤホンで聴くと、サビ裏で鳴っているコーラスワークや、間奏の一瞬だけ顔を出すフレーズに気づく瞬間がある。何度も聴き返したくなるのは、そうした発見が尽きないからだ。歌詞やMVの魅力を差し引いても、この曲は音の設計だけで十分に成立している。だからこそ、大石セレクションにおける主視点は、迷わず「曲がいい」に置いた。

「エイリアン」という言葉が示す、少しだけ浮いた距離

この曲の歌詞に丸ごと触れることはしないが、そのかわりに、歌詞が描いている距離感について考えてみたい。タイトルの「エイリアンズ」は、異星人という直接的な意味を持ちながら、実際に描かれているのはもっと身近な感覚だ。同じ街に暮らし、同じ電車に乗り、同じ夜の空気を吸っているのに、自分だけがどこか少し違う場所から来たように感じる。その違和感を、大げさな比喩ではなく、日常の情景の中に静かに置いているところに、この歌詞の巧さがある。孤独を声高に叫ぶのではなく、むしろ孤独であることを認めたうえで、そこに留まる強さのようなものが滲んでいる。都市生活を送る誰もが一度は覚える感覚、たとえば人混みの中でふと自分だけが浮いているように感じる瞬間や、慣れているはずの街が急によそよそしく見える夜。そうした経験は、特別な出来事としてではなく、生活の中に溶け込んだ違和感として描かれている。だからこそ、聴く年齢やタイミングによって、この歌詞が指し示す「距離」の意味は変わってくる。若い頃に聴けば、都会に出てきたばかりの心細さとして響くかもしれない。何年か経ってから聴けば、慣れた場所であっても完全には馴染みきれない、人間関係や帰属の複雑さとして響くこともある。説明しすぎない言葉選びが、そうした複数の読み方を可能にしている。「エイリアン」であることを否定的に描いていない点も重要だ。むしろ、少し距離があるからこそ見える景色があるという肯定的な視線が、歌詞のどこかに流れている。孤独を単なる欠落として扱うのではなく、そこから生まれる観察眼や優しさとして捉え直す。そうした視点の転換が、この曲を単なる「さみしい夜の歌」で終わらせていない。

受賞したオリジナルMVが、4Kでもう一度届く理由

この曲のミュージックビデオは、2000年当時にSPACE SHOWER Music Video Awardsで賞を受けた実績を持つ[3]。今回、ワーナーミュージック・ジャパンが公式YouTubeで公開している映像は、その受賞作を最新の技術で高画質化した4Kリマスター版であり、音楽ナタリーによれば、キリンジの過去作MVをまとめて4K化する取り組みとしては国内アーティスト初の試みだったという[7]。ここで大事なのは、これは新しく撮影されたMVではないという点だ。2000年に評価された演出、構図、編集のリズムがそのまま残っており、4K化によって解像度や色の情報量が増しただけで、物語の骨格そのものは当時のままである。だからこそ、MV単体の評価は「新しい映像体験」としてではなく、「よく出来た過去作を、より良い状態で見られるようになった」という文脈で捉えるのが正確だろう。実際に見ると、決して派手な演出で押し切るタイプの映像ではなく、曲が持つ抑制の効いた雰囲気に寄り添った、落ち着いた画作りになっている。歌詞やサウンドが描く「距離感」を映像がなぞる場面もあり、曲の理解を助けてくれる。ただし、公式MVとして高く評価されているとはいえ、この曲の核が持つ音楽的な強度や、歌詞が開く解釈の幅の広さと比べると、映像がもたらす発見の量はやや落ち着いた印象になる。4Kという技術的なアップグレードは称賛に値するが、それによって曲の魅力の中心が映像に移ったわけではない。あくまで、すでに評価されていた作品を、より多くの人が快適に見られるようにした、という誠実なリマスターの仕事だと捉えている。

四半世紀を越えて選ばれ続けるということ

この曲がCMやドラマ、映画で繰り返し起用されてきた事実は、単なる懐古の対象ではないことを示している[4][5][6]。2017年のLINEモバイルCM、2018年のNHK BSプレミアムドラマ、2022年の映画とHuluドラマ。それぞれ時代も文脈も異なる作品が、同じ一曲を選び続けている。これは、曲そのものが持つ「距離感」というテーマが、時代を問わず更新され続けているからだと考えられる。都市に生きる人の孤独や違和感は、2000年当時も今も、形を変えながら存在し続けている。だからこそ、この曲は古い名曲として消費されるのではなく、その都度、新しい作品の中で現在進行形の感情として呼び起こされている。四半世紀という時間は、音楽にとって決して短くない。それでも色褪せずに選ばれ続けるのは、曲の構造そのものが持つ強度と、歌詞が残す解釈の余白、そして受賞歴のあるMVがいまだに古びていないという、三つの要素が揃っているからだろう。今回、4Kという技術がその一部を後押ししたことは間違いないが、根本にあるのは、2000年に堀込泰行と冨田恵一が作り上げた曲そのものの完成度だと思う。

参考リンク

四半世紀前の曲がいまも新しい形で選ばれ続けるように、家や土地にも、時間を越えて残る誰かの記憶があります。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。