ページ作成日: 2026年7月3日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=Sfq4xEANM2E
確認した動画: KIRINJI「Rainy Runway」Music Video(UNIVERSAL MUSIC JAPAN公式)

大石セレクション:曲がいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★★
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:この曲の主役は、なんといってもグルーヴそのものだ。千ヶ崎学のうねるベース、伊吹文裕のタイトなドラム、sugarbeansとの共同アレンジによる4管ホーンセクション。生楽器を軸にした編成が、シンセを控えめにした今のKIRINJIらしいソウル・ミュージックを作り上げている[4]。歌詞も「雨でも前を向く」という普遍的な強さを持ち、アニメーションMVも曲の世界観に合っているが、何度も聴き返したくなる決め手は、やはりこのミドルテンポの心地よい揺れにある。だから主視点は曲がいいに置いた。

雨が降り続く日は、誰にとっても少しだけ憂鬱なものです。濡れた靴、湿った風、どんよりとした曇り空。そうした天候は、私たちの気持ちを内向きにさせ、足を鈍らせてしまいます。しかし、KIRINJIの「Rainy Runway」という曲が耳に滑り込んでくると、雨の日の景色は少し違った表情を見せ始めます。この曲は、単なる雨の日の情景を歌ったものではありません。鬱々とした雨雲の下でも、新しいお気に入りの服を着たり、髪型を少し変えたりして、あえて気持ちを弾ませて外へ飛び出していこうとする、しなやかで力強い「心構え」の歌なのです。

2020年末にバンド体制としての活動にピリオドを打ち、堀込高樹ただ一人のソロプロジェクトとして新たな歩みを始めたKIRINJI。長年連れ添ったバンドメンバーたちがそれぞれの道へと去っていったのち、一人でその巨大な看板を背負い続けることになった彼の旅路は、決して平坦なものばかりではなかったはずです。しかし、2022年6月に配信リリースされたこの「Rainy Runway」を聴くと、そこには停滞や孤独を吹き飛ばすような、むしろ一人になったからこそ磨き上げられた極上のポップセンスと、瑞々しいロマンティシズムが溢れていました。

かつて東京という巨大な街で、何者かになろうと一人で踏ん張っていた若い頃の自分。そして現在、静岡県磐田市という地元の街に戻り、介護や不動産の現場で人々の人生や家族の歴史に向き合っている今の自分。その二つの時間軸が、この軽快なソウル・ミュージックを媒介にして、静かに重なり合っていきます。雨は降り止まないかもしれない。それでも、その濡れた舗道(Runway)を、私たちは自分の足で軽やかに歩き始めることができる。大人になった今だからこそ深く染み入る、この曲の底流にある温かなメッセージについて、私の人生の記憶とともに静かに読み解いていきたいと思います。

生楽器の温もりが告げる、新たな一歩への滑走路

「Rainy Runway」は、2022年6月22日に配信限定シングルとしてリリースされ、2023年発売のアルバム『Steppin' Out』にも収録された楽曲です。作詞・作曲はすべて堀込高樹が手がけています。2020年末に個性豊かなバンド体制に一度ピリオドを打ち、完全にソロプロジェクトとなってから制作された本作は、KIRINJIの長いキャリアの中でも、新しい表現のフェーズを象徴する重要な一曲となっています。

音楽的な最大の特徴は、それまで頻繁に取り入れられていたシンセサイザーを中心としたエレクトロニックなアレンジから一歩踏み出し、生楽器の響きと温もりを前面に押し出した点にあります。長年KIRINJIのアンサンブルを支えてきた千ヶ崎学のうねるようなベースラインと、伊吹文裕のタイトで弾むようなドラムスが、シックで心地よいミドルテンポのソウル・グルーヴを形作ります。さらに、マルチプレイヤーであるsugarbeansとの共同アレンジによる4管のホーンセクションが加わることで、楽曲全体に晴れやかでオーガニックな色彩が注ぎ込まれています。

堀込高樹が紡ぐボーカルメロディは、どこまでも洗練されていながらも人肌の温かさを失わず、雨の日特有の気だるさをはねのけるような躍動感を持っています。歌詞の中で描かれるのは、雨そのものを否定したり、無理に晴れを祈ったりするような極端な態度ではありません。むしろ「雨はまだ降っている」という現実を受け入れたうえで、新しい服を身にまとい、季節の移り変わりを楽しもうとする、ウィットに富んだ前向きさです。「どんなに鬱々とした状況であっても、自分の心持ち次第で歩き方を変えられる」という、普遍的なポップセンスこそが、一人になってなお進化し続けるKIRINJIの魅力であり、聴き手を惹きつける最大の理由なのです。

雨の東京に濡れた、あの頃の心構え

この曲を聴いていると、私はかつて東京でがむしゃらに働いていた若い頃の自分を思い出さずにはいられません。何者かになりたくて、自分の限界も分からないまま、ただ忙しさの波に押し流されていた時代。特に、梅雨の時期や秋の長雨の夜、仕事帰りに濡れたアスファルトを歩くときの足取りは、驚くほど重いものでした。満員電車の湿った空気、濡れた傘が触れ合う不快感、整理のつかない仕事への焦りや孤独感が、雨粒と一緒に体にまとわりついてくるような感覚がありました。

当時の私にとって、雨の日は「憂鬱の象徴」であり、ただ足元を濡らし、進行を妨げる邪魔者でしかありませんでした。少しでも早くこの雨から逃れたいと、首をすくめて早足で歩くことしかできなかったのです。そこに「雨の日だからこそ、お気に入りの格好をして街へ出よう」といった心の余裕や遊び心などは微塵も存在しませんでした。若さゆえの緊張感と折れたくないという意地だけで、雨の夜の東京をただ耐え忍ぶように通り過ぎていました。

しかし、40代後半となった今、KIRINJIの「Rainy Runway」を聴き直すと、当時の自分がどれほど肩に力を入れて生きていたのかがよく分かります。この曲が教えてくれるのは、雨を避けて逃げる方法ではなく、雨が降る街そのものを自分だけの「滑走路(Runway)」に見立てて、ステップを踏むように歩く心構えです。思い通りにいかない日々をすぐに変えることはできなくても、心の中の音楽のボリュームを少し上げ、服装や歩き方を変えるだけで世界の見え方は一変する。もし東京時代の自分がこの曲に出会っていたなら、仕事帰りの雨の夜、駅までの暗い夜道をもう少しだけ顔を上げて歩けていたかもしれない。そうした少しの愛惜と肯定の念が、この心地よいグルーヴに乗って、私の心の中に優しく戻ってくるのです。

介護の現場から見つめる、それぞれの「雨の日」と尊厳

磐田に戻り、介護事業を立ち上げてから、私は多くの高齢者やそのご家族の人生の節目に立ち会ってきました。介護の現場というのは、ある意味で、人々の人生における「雨の日」に向き合う場所でもあります。年齢を重ね、これまで当たり前にできていたことができなくなっていくもどかしさ。病気や認知症の進行、そして住み慣れた家を離れて施設に入るという、人生の大きな環境の変化。それらは、本人にとってもご家族にとっても、心の中に重い雨雲が立ち込め、先が見えなくなるような停滞の時期と言えるかもしれません。

そうした状況に直面したとき、外側から「頑張ってください」「すぐに良くなりますよ」といった安易な励ましをかけることは、時に相手を追い詰める刃になってしまいます。雨が激しく降っているときに、無理やり青空を見せようとするようなアプローチは、現場では通用しません。本当に必要なのは、今まさに雨の中にいるその人の佇まいをそのまま受け止め、その雨の中でも、その人らしく尊厳を持って歩めるよう、静かに寄り添うことです。

「Rainy Runway」で描かれる、雨の中でもお気に入りの服を着て出かけようとする人々の姿は、まさに私たちが介護の仕事で守りたいと願う「人間の尊厳」そのものです。どんなに身体が不自由になっても、記憶が少しずつ薄れていっても、その人の人生にはその人だけの独自の彩りがあり、誇りがあります。私たちの仕事は、利用者様がそれぞれの「雨の日」を、少しでも気持ちよく、尊厳を保ちながら誇り高く生きていけるようサポートすること。車椅子を押すその道が、ただの移動経路ではなく、その方のための輝かしい「滑走路」となるように環境を整えることなのだと、この曲を聴くたびに強く確信させられます。雨を止めることはできなくても、傘を差し掛け、歩みを合わせることはできる。それこそが介護の現場において私たちが果たすべき大切な役割なのです。

新しい暮らしを拓く、不動産という名の「Runway」

介護事業と並ぶもう一つの柱が、不動産事業です。介護の現場で高齢者やご家族に向き合う中で、私は空き家問題や実家の相続、土地建物の整理といった、住まいの変化にまつわる数多くの相談を受けるようになりました。家族が長く暮らした実家を手放す、あるいは思い出の詰まった土地を売却するという決断は、依頼者にとって非常に大きな負担を伴う出来事です。それは単なる経済的な取引ではなく、家族の歴史という一つの季節に区切りをつけ、未知の新しい生活へと一歩を踏み出す、まさに「滑走路(Runway)」の上に立つような緊張の瞬間でもあります。

家や土地には、そこに暮らした人々の無数の記憶が染み込んでいます。子供たちが庭で遊んだ声、夕暮れ時の台所から漂ってきた匂い、家族で囲んだ食卓の温もり。実家を整理するという作業は、そうした温かな記憶を一つずつ紐解き、整理していくプロセスです。相談に来られる多くの方は、過去との決別や喪失感に胸を痛め、立ち止まってしまっています。雨が降りしきる滑走路の前で、離陸する勇気を持てずにいる飛行機のように。

私たちの仕事は、そうした方々の背中を無理に押すのではなく、まずはその土地や建物に残された時間を一緒に振り返り、丁寧に認めることから始めます。金額の査定だけでなく、思い出に敬意を払い、納得のいく形で新しい持ち主へと引き継ぐお手伝いをする。そうして過去との折り合いをきちんとつけたとき、滑走路の向こうに、新しい暮らしへと飛び立つための光のラインが見えてきます。雨の中でのスタートであっても、しっかりと整備された滑走路があれば、家族はまた新しい空へと羽ばたくことができる。「Rainy Runway」という曲が持つ、雨の中でも前を向く強さと軽やかさは、不動産の仕事を通じてお客様に提供したいと願う未来そのものなのです。

夜の静寂と作業を支える、大人のためのグルーヴ

現在、私は磐田の事務所で、夜遅くに一人で事務作業やWEBサイトの更新、AIを活用したシステム制作などを行うことが多くあります。そうした静まり返った夜の作業時間において、この「Rainy Runway」は極めて優れた「作業用BGM」としての役割を果たしてくれています。テンポが速すぎず遅すぎない心地よいミドルテンポのグルーヴは、集中力を妨げることがなく、むしろ一定のリズムを体に刻み込むことで作業効率を静かに引き上げてくれます。

また、堀込高樹のボーカルは決して感情を押し付けてこない、大人のちょうど良い距離感を保っています。泣かせようとしたり、過度に気分を高揚させようとしたりしないその乾いた優しさは、疲れた頭をすっきりと整え、考えすぎる思考をニュートラルに戻してくれます。深夜の静寂の中で、一人でパソコンに向かいながらこの曲を聴いていると、どんなに仕事が山積みであっても、「焦らず自分のペースで一歩ずつ進めればいい」という、静かな元気が湧いてくるのを感じます。

この曲を一言で表現するならば、「荒天の人生を生き抜く大人のための、軽やかな傘となる音楽」です。ただ雨をしのぐだけでなく、雨音すらもパーカッションの一部として楽しんでしまうような、知性とユーモア。それがこの曲にはあります。かつて東京で雨に打たれながら必死に耐えていた若い自分も、今磐田で様々な人の「雨の日」に寄り添いながら働く自分も、すべてこの一つの滑走路(Runway)の上でつながっている。そう思わせてくれるこの極上のポップスは、これからも私の夜の作業を支え、日々の暮らしにささやかな希望の光を灯し続けてくれることでしょう。

音楽が昔の街や自分を思い出させてくれるように、家や土地にも、誰かの時間が残っています。磐田市周辺で、相続した実家・空き家・土地建物の整理に悩んでいる方は、富士ヶ丘サービスまでご相談ください。そこにあった時間を少しだけ振り返ってから、次の道を決めてもいい。私たちは、その新しい滑走路を整えるお手伝いをしています。

ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、雨の中でも前を向いて歩み続ける記憶を読み直す場所です。