ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=TXEGP0-hQwU
確認した動画: 小比類巻かほる - TOGETHER(Official Video)(Kahoru Kohiruimaki)

1988年11月21日にリリースされた「TOGETHER」は、小比類巻かほるの11枚目のシングルであり、アルバム『SO REAL』からのシングルカットとして発表された[1]。デビュー当初から在籍していたエピック・ソニーから発売された最後のシングルという、彼女のキャリアにおいてひとつの節目を飾る楽曲でもある[1]。作曲は大内義昭が手がけているが、注目すべきは全作詞を小比類巻かほる自身が手がけているという点だ[1]

大石セレクション:歌詞がいい ★★★★☆

  • 曲がいい:★★★☆☆
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:これまで多くの楽曲を他の作詞家の言葉で歌ってきた彼女が、エピック・ソニー在籍時代の最後のシングルというタイミングで、初めて全作詞を自らの手で綴ったという事実は[1]、この曲の歌詞に特別な重みを与えている。誰かの言葉を歌うのではなく、自分自身の言葉で「共に」という想いを表現するという選択そのものが、この曲最大の価値だと感じ、主視点を歌詞がいいに置いた。

ひとつの時代の終わりに、選ばれた「TOGETHER」という言葉

エピック・ソニー在籍時代最後のシングルというタイミングで、あえて「TOGETHER(共に)」という言葉をタイトルに選んだことには、深い意味が込められているように感じる[1]。デビューから在籍していたレーベルを離れるという、ある種の別れの局面において、後ろ向きな喪失感ではなく、「共に歩んできた」という肯定的な言葉を選んだこと。この選択は、彼女がこれまでのキャリアを、悔いのない、豊かな時間として受け止めていたことを物語っているのではないだろうか。何かが終わるとき、それを「別れ」としてではなく「共に過ごした証」として言葉にできる強さは、簡単に持てるものではない。

作曲家に任せきりにしなかった、自分の言葉への挑戦

「Hold On Me」「City Hunter」「TONIGHT」と、いずれも他の作詞家の言葉を自身の声で表現してきた彼女が、この曲では初めて全作詞を自分の手で手がけている[1]。歌手として与えられた言葉を歌う技術と、自分自身の言葉で伝えたい感情を紡ぐ技術は、まったく別の能力だ。これまで多くのヒット曲を歌い続けてきた経験があったからこそ、自分自身の言葉で何を伝えたいのかが、より明確に見えてきたのかもしれない。TDKのハイポジション用オーディオテープ「SR」のCMソングとしても使われたこの曲は[1]、決して大々的なタイアップというわけではなかったかもしれないが、だからこそ、彼女自身の内側から生まれた言葉を、素直に届けることができたのではないかとも思う。

桜色の光が舞う、静かな別れの情景

MVで見せられるのは、夜の街並みを背景に、桜色を思わせる光の粒が舞う映像だ。派手な演出ではなく、静かに舞い落ちる光の粒が、何かの終わりと、それでも続いていく時間の両方を同時に表現しているように見える。彼女自身が言葉を紡いだこの曲にふさわしく、映像もまた説明的になりすぎず、余白を持った構成になっている。見る人それぞれが、自分自身の「共に過ごした時間」を重ね合わせられるような、そんな懐の深さを持った映像だ。

TDKのオーディオテープが描いた、記録という行為の尊さ

この曲がタイアップしたTDKのハイポジション用オーディオテープ「SR」は[1]、当時の若者たちが好きな音楽を録音し、繰り返し聴くために欠かせない存在だった。「共に」という言葉を掲げるこの曲が、音を記録し、残すための製品のCMソングとして使われたことには、ある種の必然性があったようにも思える。誰かと過ごした時間、共に聴いた音楽。そうした記憶を、テープという物理的な媒体に刻みつけて残しておきたいという願いは、デジタル配信が主流になった今のリスナーには想像しにくいかもしれないが、当時は非常に切実な欲求だった。この曲は、そうした「記録すること」への愛着とも、静かに響き合っている。

レーベルを移っても変わらなかった、歌い手としての核

この曲の後、小比類巻かほるはレーベルを移し、新たな章へと歩みを進めていく。「TOGETHER」という曲は、その節目にあって、過去を振り返るためだけの曲ではなく、これから先も「共に」歩んでいく相手や仲間への想いを込めた、前向きな一曲だったのだと思う。誰かに与えられた言葉ではなく、自分自身の言葉で綴ったからこそ、この曲には彼女自身の等身大の想いが、素直に刻まれている。エピック・ソニーを離れた後も、彼女は長くシンガーとしてのキャリアを続けていく。この曲で見せた「自分の言葉で歌う」という経験は、その後の活動においても、彼女の表現の核として受け継がれていったのではないだろうか。与えられた曲を歌いこなす技術と、自分自身の想いを言葉にする力。この曲は、その両方を併せ持つアーティストへと成長していく、彼女のキャリアの重要な転換点を記録した一曲だ。ひとつのレーベルで積み重ねてきた経験を、感謝と共に次の場所へ持ち運んでいく。そういう前向きな別れ方ができる人は、決して多くない。この曲を聴くと、そうした彼女の誠実な人柄までもが伝わってくるように感じる。人生の中で何かを終える瞬間は、誰にでも訪れる。そのときに、それまでの時間を「共に」という肯定的な言葉で締めくくれるかどうかが、その後の人生の歩き方を大きく左右するのかもしれない。桜色の光が夜の街に静かに舞い落ちるあの映像は、何かを惜しみながらも、それでも前を向いて歩き出す人の背中を、優しく後押ししてくれているように見える。過去を否定せず、感謝と共に手放していく。そんな成熟した別れ方を、この一曲は静かに教えてくれる。共に過ごした時間そのものが、次への一歩を支えてくれる財産になる。この曲を聴くたびに、そのことを静かに思い出させられる。

参考リンク

ひとつの区切りを前向きな言葉で語れるように、住まいの整理にも、感謝とともに次へ進む選択があります。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。