「Expert(達人、熟練者)」というタイトルの曲を、20年近いキャリアを持つKREVAが歌うとき、そこには若さの誇示とはまったく違う、静かな自信が宿ります。この曲の背景を知って、あらためて感心させられたのは、トラック自体はかなり前に完成していたにもかかわらず、KREVAが「いいものは待ってていいと思いますよ」という考えのもとに、リリースのタイミングを見極めていたという事実です。多くの表現者が、完成したものはすぐに世に出したいという衝動に駆られる中で、あえて機が熟すのを待つという判断ができること自体、まさに「Expert」の名にふさわしい落ち着きだと思います。焦らず、しかし諦めず、最良のタイミングを見計らう。この曲の存在そのものが、タイトルの意味を体現しています。
待たされた末に、CMソングとして開花
「Expert」は、2023年9月8日、KREVAが「クレバの日」と自ら呼ぶ日にリリースされました。この曲は、2025年2月19日発売のKREVA10枚目のオリジナルアルバム『Project K』の先行配信シングルという位置づけです。制作段階からトラックを気に入り、大事に温めてきたというこの曲は、リリース後、電気自動車の世界的な販売台数No.1(2023年時点)を誇るBYDの人気SUVのCMソングに起用されました。長く温められてきた曲が、こうして大きな舞台で花開く。待つことの価値を、この曲の歩みそのものが証明しています。
ヒップホップ出身でありながら、KREVAはトラックメイキング、作詞作曲、ボーカル、すべてをひとりでこなすオールラウンダーとして知られています。「Expert」という言葉が似合うのは、単に長く活動してきたからだけでなく、あらゆる工程を自分の手で極めてきた、その総合力ゆえなのだと思います。
待つことができる、という強さ
東京で働いていた頃、成果をすぐに求められるプレッシャーの中で、じっくり待つという選択肢を持てないことがよくありました。早く結果を出さなければという焦りが、かえって仕事の質を落としてしまうことも少なくありませんでした。「いいものは待ってていい」というKREVAの言葉には、経験を積んだ者だけが持てる、独特の余裕があります。焦って世に出すのではなく、最良のタイミングを見極める。この判断力こそが、本当の「Expert」の証なのだと、この曲を聴くたびに教えられます。
待つということは、何もしないことではありません。トラックを大事に温めながら、その曲がもっとも輝く瞬間を見極め続ける。この静かな忍耐こそが、結果として、CMソングという大きな出会いを引き寄せたのだと思います。焦らず、しかし諦めない。この姿勢は、音楽制作に限らず、あらゆる仕事に通じる知恵だと感じます。
磐田で待つ、然るべきタイミング
磐田で家や土地の相談を受けていると、すぐに結論を出すことよりも、然るべきタイミングを待つことの方が、結果として良い解決につながる場面によく出会います。相続や空き家の問題は、焦って進めると、かえって家族の間にしこりを残すことがあります。時間をかけて、家族それぞれの気持ちが整うのを待つこと。それは怠慢ではなく、経験を積んだ者だからこそできる、賢明な判断です。
「いいものは待ってていい」というKREVAの言葉を、この仕事の中でもよく思い出します。急かすのではなく、機が熟すのを見守る。この曲が教えてくれる「Expert」の在り方は、音楽の世界だけでなく、人生のさまざまな場面で活かせる知恵だと感じています。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、待つことの価値を読み直す場所です。
