ページ作成日: 2026年7月6日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=EYd_oZTcIlU
確認した動画: MISIA - BELIEVE (Official HD Music Video)(MISIA本人公式扱いのオフィシャルMV)

信じる、という言葉を、私たちは案外あっさり口にします。「あなたを信じている」「自分を信じよう」。けれど本当に信じるという行為は、疑いをすべて消し去った先にある無邪気な確信ではなく、むしろ不安や迷いを抱えたまま、それでも一歩を踏み出す覚悟に近いのだと、私はMISIAの「BELIEVE」を聴くたびに思います。この曲がリリースされたのは1999年4月。私はまだ若く、東京で会社員として働き始めたばかりの頃でした。当時の自分は、信じるという言葉の重みなど深く考えたこともなく、ただ目の前の仕事をこなす日々を過ごしていました。それでもラジオから流れてきたMISIAの伸びやかな声には、はっきりと足を止めさせる力がありました。デビューからまだ1年ほどの、無名に近いシンガーが放ったこの曲には、後年の壮大なステージングとは違う、もっと素朴で切実な祈りのような響きがあったのです。

大石セレクション:曲がいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★★
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:「BELIEVE」は、ミディアムテンポのR&Bを軸に、ブルース的なフレージングからゴスペル調のエンディングへとなだれ込む構成が高く評価されており、デビュー間もない時期の楽曲でありながら、今なお色褪せない普遍性を持っている。歌声そのものの説得力と、曲の展開が生む高揚感は、他の追随を許さない強さがあり、主視点は迷わず「曲がいい」に置いた。歌詞も「信じる」というテーマをまっすぐに描き出す力強さがあり、聴く年齢によって響き方が変わる奥行きを持つが、曲の完成度と歌唱の圧倒的な説得力には一歩譲る。MVについては、公式のオフィシャルミュージックビデオとして確認できたものの、演出面での情報が限られており、曲や歌詞ほどの突出した評価点を見出しにくいため、星3つにとどめた。

無名の新人が放った、3枚目のシングルという賭け

MISIAは1998年2月21日、デビューシングル「つつみ込むように…」で音楽シーンに登場しました[1]。デビュー前からクラブDJたちの後押しで話題になり、先行アナログ盤が即完売したというエピソードは、彼女が最初から只者ではなかったことを物語っています[1]。続く1998年5月21日には2ndシングル「陽のあたる場所」を発表し、着実にキャリアを積み重ねていきます[2]。そして1999年4月21日(アナログ盤は同年4月7日)、BMG JAPANから3枚目のシングルとしてリリースされたのが「BELIEVE」でした[3][4]。作詞はMISIA自身が手がけ、作曲・編曲は佐々木潤が担当しています[3][4]。カップリングには「花/鳥/風/月」が収録され、こちらは黒須チヒロが作詞、MISIAと松井寛が作曲を手がけました[3][4]。この曲は日立マクセルの「マクセルMD」テレビCMソングにも起用され、オリコン週間チャートでは自己最高となる2位を記録、1999年の年間チャートでは82位にランクインし、日本レコード協会からゴールド認定(のちにプラチナ相当の売上に到達)を受けています[3]。デビューからわずか3作目でここまでの評価を得たことは、決してまぐれではなかったのだと、後から振り返るほどに実感させられます。

「BELIEVE」は、後に2000年1月1日発売のアルバム『LOVE IS THE MESSAGE』に収録され[3]、翌2000年にはリミックスアルバム『MISIA REMIX 2000 LITTLE TOKYO』にも収められました[3]。さらに2002年発売のベストアルバム『MISIA GREATEST HITS』をはじめ、複数のベスト盤に繰り返し選ばれ続けています[3]。1枚のシングルが、これほど長く様々な形で聴かれ続けているという事実そのものが、この曲の強度を物語っていると思います。

ブルースからゴスペルへ、声が旅をする構成

「BELIEVE」というタイトルを持つ以上、この曲がどこか宗教的な確信に満ちた楽曲だろうと想像する人もいるかもしれません。しかし実際に聴いてみると、その印象は少し違います。ミディアムテンポのR&Bを土台に、深く沈み込むようなベースラインが曲全体を支え、そこにブルース由来の粘りのあるフレージングが乗ります。前半は決して声を張り上げすぎず、むしろ抑制の効いた歌い回しで、聴き手をじっくりと曲の世界に引き込んでいく構成です。ところが曲が進むにつれて、その抑制は少しずつ解かれていき、終盤にはゴスペル的な高揚感を帯びたエンディングへとなだれ込みます。この「静から動へ」「祈りから確信へ」という展開そのものが、まさに「信じる」という行為の内実を音で表現しているように、私には聴こえます。最初から迷いなく信じているのではなく、抑えた声で自分自身に言い聞かせるようにスタートし、歌い進むうちに、その言葉が本物の確信へと育っていく。曲の構成そのものが、信じるということの過程を描いているのです。

デビュー間もない時期の歌声というと、荒削りな勢いだけで押し切るイメージを持たれることもありますが、「BELIEVE」で聴けるMISIAの声は、すでに緩急のコントロールを備えています。低く沈めるフレーズと、サビで一気に開放されるフレーズの落差が大きいからこそ、聴き終えたあとに残るカタルシスが強い。イヤホンで聴くと、ベースラインの重心の低さと、ボーカルの倍音の豊かさが同時に感じ取れて、単なる歌唱力のデモンストレーションではなく、曲全体としての設計の緻密さに気づかされます。佐々木潤による作曲・編曲は、ボーカルを主役に据えながらも、楽器隊が単なる伴奏に留まらず、それぞれのパートが呼吸するように絡み合っている点が印象的です。何度聴いても飽きが来ないのは、細部にまで意図が行き渡っているからだと思います。

疑いを抱えながら、それでも前を向くという言葉

歌詞をそのまま書き写すことはしませんが、「BELIEVE」が描いているテーマについては触れておきたいと思います。この曲は、単純な恋愛賛歌ではなく、大切な人との別れや、先の見えない状況に向き合う心情を歌っていると受け取れます[5]。MISIA自身が作詞を手がけているという事実も、この曲に特別な重みを与えています。デビューして間もない、まだ何者でもなかった時期の彼女が、自分自身の言葉で「信じること」を歌にしたという事実は、単なる楽曲提供とは違う切実さを帯びています。歌詞の中で描かれる「信じる」という行為は、決して迷いのない盲信ではありません。むしろ、切なさや別れの痛みを抱えたまま、それでも前を向こうとする意志として描かれているように感じられます[5]。だからこそ、この歌詞は聴く人の年齢や経験によって、まったく違う響き方をするのだと思います。20代の頃に聴けば恋愛の歌として胸に迫るでしょうし、40代、50代になってから聴き直せば、仕事や家族、人生の岐路における「信じる」という選択として、また違った重みで届いてくるはずです。説明しすぎない言葉の選び方だからこそ、聴き手それぞれの人生に重なる余白が残されているのだと思います。

公式ミュージックビデオという記録

今回参照した動画は、YouTube上で「MISIA - BELIEVE (Official HD Music Video)」というタイトルで公開されているオフィシャルミュージックビデオです[6]。1999年当時の映像がHD画質でリマスターされ、現在も視聴できる状態で残されているという事実自体、この曲がMISIAのキャリアの中でどれほど大切に扱われてきたかを物語っています。MISIAはその後、過去楽曲のミュージックビデオを多数リマスターしてYouTube上に公開しており[7]、「BELIEVE」もその一環として、あるいはそれ以前から公式チャンネルで大切に保存されてきた作品だと考えられます。ただし、今回の調査ではMVの監督名や撮影のコンセプト、具体的な演出意図についての一次情報までは確認することができませんでした。断定的な演出評はできませんが、公式のオフィシャルミュージックビデオとして存在し、四半世紀以上経った今も視聴できる形で残されているという事実そのものに、私は静かな価値を感じます。映像を見ることで、1999年当時のMISIAの佇まいや表情、まだ荒削りな部分を残しながらも確かな存在感を放つ姿を確認できるという点では、音源だけでは得られない手触りがあります。ただ、演出そのものの独自性や物語性という点で曲を凌駕するほどの強さがあるとまでは言い切れないため、評価は星3つとしました。

磐田で聴き直す、信じることの意味

私は今、静岡県磐田市で介護と不動産の仕事をしています。この仕事を続けていると、「信じる」という言葉の重みを何度も突きつけられます。相続した実家をどうするか、長年暮らした家をどう手放すか、あるいはどう次の世代に引き継ぐか。相談に来られる方々の多くは、答えのはっきりしない選択の前で立ち止まっています。こちらが提案する道が本当に正しいのか、私自身にも確信が持てないまま、それでも一緒に考え、進んでいくしかない場面が数え切れないほどありました。そんなとき、「BELIEVE」の、静かな抑制から始まり、少しずつ確信へと育っていく構成を思い出すことがあります。信じるということは、最初から迷いがない状態を指すのではなく、迷いを抱えながらも、対話を重ねる中で少しずつ強くなっていく気持ちのことなのだと、この曲は教えてくれます。介護の現場でも同じです。ご本人やご家族が下す決断が、本当に最善なのかどうか、誰にも完全な答えは分かりません。それでも、その時々で「これでいい」と信じて前へ進む力を支えることが、私たちの仕事なのだと思っています。デビュー間もない頃のMISIAが、自分自身の言葉でこの曲を書いたように、私たちもまた、それぞれの持ち場で、自分の言葉と経験を頼りに、目の前の人と向き合っていくしかないのだと思います。

1999年当時、まだ会社員だった私がこの曲に出会ったとき、そこに込められた覚悟の深さまでは理解していなかったように思います。ただ声の美しさに惹かれていただけでした。それから四半世紀以上が経ち、磐田で日々の仕事に向き合う中で聴き直すと、この曲が描いていた「信じる」という行為の複雑さが、ようやく少しずつ分かってきた気がします。音楽は、こうして同じ旋律のまま、聴き手の側の変化を映し出す鏡になるのだと、あらためて感じさせられました。

参考リンク

信じることは、迷いがないことではなく、迷いを抱えたまま前へ進む力なのだと、この曲は教えてくれます。家や土地の未来を選ぶときも、同じ覚悟が必要になることがあります。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。