「ずっと」という言葉を、人はどれくらいの覚悟で口にできるのでしょうか。恋が終わらない、と言い切ってしまうことは、裏を返せば、終わりを知っているからこそ出てくる言葉のようにも思えます。MISIAの「恋は終わらないずっと」を初めて聴いたのは、2012年の初夏でした。当時の私はまだ東京で働いていて、日々の仕事に追われながら、テレビをつけっぱなしにしていた時間の中で、この曲がドラマの主題歌として流れてくるのを何度も耳にしていた記憶があります。NHKドラマ10「はつ恋」の主題歌として書き下ろされたこの曲は、脚本家・中園ミホとMISIAの、2000年のフジテレビ系ドラマ「やまとなでしこ」の主題歌「Everything」以来12年ぶりの再タッグだったと伝えられています。あのときの自分は、まさか10年以上経ってから、この曲を磐田の自室で聴き返すことになるとは思っていませんでした。「初恋」というドラマのタイトルと、「ずっと」という言葉の組み合わせは、若さゆえの一途さと、時間を経てもなお色褪せない想いの両方を背負っています。そのどちらの意味合いで聴いても、この曲はきちんと届くように作られている。そのことに、あらためて気づかされます。
12年越しの再会が生んだ、書き下ろしの一曲
「恋は終わらないずっと」は、2012年6月20日にアリオラジャパンからリリースされたMISIAの26thシングルです。NHKドラマ10「はつ恋」の主題歌として書き下ろされ、脚本を手がけた中園ミホとMISIAは、2000年放送のフジテレビ系ドラマ「やまとなでしこ」で主題歌「Everything」を担当して以来、実に12年ぶりの顔合わせになったと伝えられています。ドラマの主題歌というのは、多くの場合、放送期間という限られた時間の中で消費されて終わってしまうこともあります。けれどこの曲は、12年という時間を挟んで再び結ばれた縁の上に立っているからこそ、単発のタイアップ曲以上の重みを持っているように感じられます。楽曲のクレジットは、作詞がMISIA自身、作曲と編曲を佐々木潤が担当しており、プロデュースも佐々木潤とGomiが手がけたとされています。マキシシングルには、タイトル曲のほかに「百年愛」、アコースティック・バージョン、そしてスティーヴィー・ワンダーの「Ribbon In The Sky」のリミックスが収録されており、初回生産限定盤にはMISIA書き下ろしの詩集「はつ恋歌」が付属していたと伝えられています。この曲だけを取り出すのではなく、詩集までもがセットになっていたという事実は、この曲がドラマの一場面のためだけに作られたのではなく、MISIA自身の「初恋」というテーマへの向き合い方そのものだったことを物語っているように思います。チャートでは、オリコン週間シングルランキングで17位、Billboard Japan Hot 100では週間16位を記録したと伝えられています。爆発的な大ヒットという規模ではないかもしれませんが、10年以上経った今もカラオケや配信で歌い継がれていること自体が、この曲の本当の評価を示しているのではないでしょうか。
息の長いフレージングが刻む、終わらないという確信
MISIAというシンガーの魅力は、単に声量や音域の広さだけではありません。「恋は終わらないずっと」を聴いていて何より引き込まれるのは、フレーズの終わりを決して急がない、あの独特の「間」の取り方です。イントロは静かに始まり、Aメロでは言葉を置くように、ひとつひとつの音節を確かめながら歌が進んでいきます。そこからBメロを経てサビに向かうにつれて、声の重心が少しずつ持ち上がっていく。サビの入り口で一度呼吸を整え、そこから伸びやかなロングトーンへとつながっていく構成は、聴き手の呼吸まで一緒に持っていかれるような感覚があります。特別に激しいビートや、耳を奪うような奇抜なアレンジがあるわけではありません。むしろ、ピアノとストリングスを中心にした、どちらかといえば落ち着いた音作りです。けれどその落ち着きの中に、MISIAの声がまっすぐに立っているからこそ、曲全体に確かな芯が通っている。1番と2番でわずかに表情を変え、ラストサビに向けて音数がそっと増えていく展開も、聴くたびに新しい発見があります。イヤホンで聴くと、ブレスの位置や声のかすれまでもが克明に届き、それがかえって「作り物ではない」という説得力を生んでいるように感じます。歌詞の意味を知らなくても、この声とメロディの重なりだけで、何かが終わらずに続いていくという感覚を受け取れる。それこそが、この曲を「曲がいい」の項目で最高評価にした最大の理由です。
「ずっと」という言葉に込められた、覚悟としての歌詞
歌詞をそのまま書き写すことはしませんが、この曲の言葉が向いている方向については触れておきたいと思います。「恋は終わらないずっと」というタイトルそのものが、すでに一つの宣言になっています。恋には必ず終わりが来るかもしれない、という不安を抱えながらも、それでもなお「終わらない」と言い切る。その言葉は、若さゆえの無邪気な楽観ではなく、むしろ終わりを知った上での覚悟のように響きます。ドラマ「はつ恋」というタイトルが持つ、まだ何色にも染まっていない恋の始まりのイメージと、「ずっと」という時間の永続性を示す言葉が組み合わさることで、この歌詞は、恋の始まりと、その先にある長い時間の両方を同時に見つめているように思えます。作詞をMISIA自身が手がけているという事実も、この曲を語る上で欠かせません。誰かに書いてもらった言葉を歌うのではなく、自分の言葉として「終わらない」と歌うからこそ、そこに嘘のない実感が宿っているのだと思います。歌詞の中に描かれる時間の流れ方、過去を振り返る視点と、今この瞬間を歌う視点の切り替わり方には、聴く年齢によって受け取り方が変わる余白があります。10代で聴いたときと、40代を過ぎてから聴き直すのとでは、同じ「ずっと」という言葉の重みがまるで違って感じられる。そうした奥行きの深さは高く評価できるものの、物語としての展開や具体的な情景描写という点では、曲そのものが持つ普遍的な強度にはわずかに及ばないと感じ、今回は歌詞がいいを僅差の次点としました。
磐田で聴き直す、終わらないものについて
私は仕事柄、家族の記憶が染み込んだ実家や、長く誰も住まなくなった空き家に関わることが少なくありません。そこで感じるのは、建物そのものは古びていっても、そこに刻まれた想いや記憶は、驚くほど「終わらない」ということです。祖父母が暮らした部屋、子どもが育った台所、夫婦で選んだ庭木。持ち主が変わっても、あるいは家そのものがなくなっても、そこにあった時間の手触りは、関わった人たちの中でずっと続いていく。「恋は終わらないずっと」を聴くたびに、私はこの曲のテーマである初恋の終わらなさと、自分が仕事の中で向き合ってきた「家族の記憶の終わらなさ」を、どこか重ねて聴いてしまいます。若い頃に東京で過ごした日々の中で、この曲がドラマの主題歌として繰り返し流れていたときの自分は、まだ結婚も、家業を継ぐことも、磐田で暮らすことも知りませんでした。それでも「終わらない」という言葉だけは、なぜか耳の奥に残り続けていました。今こうして、相続や空き家の相談を仕事にしながらこの曲を聴き直すと、恋も、家族の記憶も、形を変えながらも本当に終わることはないのかもしれないと、静かに思わされます。
公式MVに見る、飾らないパフォーマンスの説得力
この曲の公式ミュージックビデオは、MISIA本人の公式YouTubeチャンネル(@misia)にて「MISIA - 恋は終わらないずっと(Official Music Video)」として公開されており、公式性については確認が取れています。映像は、凝った物語仕立てや大掛かりなロケーションを前面に押し出すタイプではなく、MISIA自身の歌唱を軸にしたシンプルな構成になっている印象です。派手な演出に頼らず、歌そのものの説得力で見せる作りは、この曲が持つ「静かな覚悟」というテーマとは矛盾しません。むしろ、映像的な仕掛けを控えることで、聴き手の意識を歌声とメロディに集中させる効果があるとも言えます。ただし、MV考察という観点で見たとき、色彩設計や場面転換、カメラワークの工夫といった映像表現そのものが曲の解釈を大きく広げているとまでは言い切れず、あくまで楽曲を支える一つの手段として機能している段階にとどまっています。だからこそ今回は、MVがいいをやや抑えた評価とし、主役はあくまで曲そのものの力に置いています。それでも、公式チャンネルで確認できるパフォーマンスの記録として、この曲をYouTubeで聴く価値は十分にあります。何度も再生し、歌声の細部に耳を澄ませてみてほしいと思います。
参考リンク
- [1] 恋は終わらないずっと - Wikipedia
- [2] 恋は終わらないずっと | DISCOGRAPHY | 【公式】MISIA | MISIA OFFICIAL SITE
- [3] 恋は終わらないずっと | MISIA | ソニーミュージックオフィシャルサイト
- [4] NHKドラマ10「はつ恋」主題歌!MISIAニューシングル「恋は終わらないずっと」着うた(R)配信スタート!! - ソニーミュージック
- [5] MISIA - 恋は終わらないずっと(Official Music Video) - YouTube
- [6] MISIA 恋は終わらないずっと 歌詞 - 歌ネット
恋も、家族の記憶も、形を変えながらずっと続いていくものだと思います。
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