ページ作成日: 2026年7月3日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=X4DnDmnwJoY
確認した動画: Nulbarich – ain't on the map yet (Official Music Video)(Nulbarich本人公式チャンネル)

「ain't on the map yet」、まだ地図に載っていない。この言葉が指しているのは、単に道に迷っているという意味だけではないはずです。自分の居場所が、まだ世界のどこにも記録されていない。誰かに証明してもらう場所が、まだない。そういう、存在そのものの不確かさを歌った1曲だと感じます。地図というのは、すでに誰かが確認し、名前をつけ、線を引いたものの集合です。地図に載っていないということは、まだ誰にも認められていない、まだ名前のない場所を、自分の足だけで歩いているということです。不安と同時に、まだ誰にも侵されていない自由もそこにはあります。この曲のグルーヴには、その両方の感情が同居しています。

2ndアルバム『H.O.T』の中で

「ain't on the map yet」は、2018年3月7日にリリースされたNulbarichの2ndアルバム『H.O.T』に収録された楽曲です。作詞作曲はKentaro、Ryan Octaviano、そしてバンドの中心人物であるJQ(Nulbarich)が手がけています。歌詞の中では、自分の居場所や住所さえも見つけられずにいるという比喩的な表現が用いられており、まだ確立されていない、探し続けている状態そのものが、曲全体のテーマになっています。

1stアルバムから間もない時期に発表されたこのアルバムは、Nulbarichがまだキャリアの初期段階にあった時期の作品です。デビューしたばかりのバンドが、自分たちの居場所をまだ確信できていないという歌を、あえてこの時期に発表したこと自体、とても正直な創作態度だと思います。成功を確信したふりをするのではなく、まだ何者でもない不安定さを、そのまま音楽にする。その率直さが、この曲に独特の説得力を与えています。

地図にない場所を歩く不安

東京で働き始めた頃、自分がこの先どこに向かっているのか、まったく見えていませんでした。先輩たちはそれぞれのキャリアの地図を持っているように見えたのに、自分だけがまだ、何の地図も持たずに歩いているような感覚がありました。あの頃の不安を、今振り返ると、決して悪いものだったとは思いません。地図がないということは、誰かが決めた道を歩かされているのではなく、自分自身で道を作っていける自由を持っているということでもあったからです。

キャリアの初期、あるいは人生の転換期には、誰しもこの「地図にない場所」を歩く時期を経験します。この曲が描く不安と孤独は、決して特別なものではなく、何かを新しく始めようとするすべての人が通る道なのだと思います。地図に載る日が来るかどうかは分かりませんが、載っていないからこそ、自分だけの足跡をそこに刻める。この曲を聴くと、そういう前向きな読み替えができるようになります。

磐田という、地図の上の場所から

東京を離れ、磐田に戻ってきたとき、私はある意味で「地図に載っている場所」に帰ってきたはずでした。生まれ育った土地、慣れ親しんだ景色。それでも、家や土地の相談という新しい仕事を始めたとき、その仕事における自分の立ち位置は、まだ何の地図もない状態でした。慣れた土地の上で、まったく新しい道を切り拓いていく。その感覚は、この曲が歌う「まだ地図に載っていない」感覚と、驚くほど重なります。

相談に来られる方々の多くも、人生のどこかの地点で、地図にない場所を歩む決断を迫られています。実家をどうするか、これからどこで暮らすか。答えの決まった地図はどこにもありません。それでも一歩ずつ歩いていくしかない。この曲が持つ、不安と自由が同居したグルーヴは、そうした決断の場面に立ち会うたびに、静かに背中を押してくれます。

ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、地図にない場所を歩いてきた記憶を読み直す場所です。