Sweet and Sour、甘くて酸っぱい。この味覚の組み合わせは、中華料理の酢豚のように、単体では成立しにくい2つの要素が、合わさることで初めて完成する味わいです。Nulbarichのこの曲も、軽やかで洗練されたポップネスの中に、ほろ苦さや切なさをきちんと同居させています。単純にハッピーなだけの曲ではなく、かといって重く沈み込むわけでもない。この絶妙な中間地点に立ち続けられることこそ、大人になってから聴くポップスの醍醐味なのだと思います。人生における嬉しいことと苦いことは、たいてい同時にやってきます。この曲は、その両方を否定せず、まとめて受け止める強さを、軽やかなグルーヴの中に忍ばせています。
光石研主演ドラマのエンディングテーマとして
「Sweet and Sour」は、2019年2月6日にリリースされたNulbarichの3rdアルバム『Blank Envelope』に収録された楽曲です。この曲は、テレビ東京系の木曜ドラマ25「デザイナー 渋井直人の休日」のエンディングテーマとして書き下ろされました。俳優の光石研が主演を務めたこのドラマは、主人公が日々の小さな出来事の中に喜びを見出しながら、静かに生きていく姿を描いた作品です。派手な事件は起こらず、日常の細やかな機微を丁寧にすくい上げるドラマの世界観と、この曲が持つ、軽やかさと苦さが同居した空気感は、見事に響き合っています。
ドラマのタイトルにある「休日」という言葉も、この曲の性質をよく表しています。休日というのは、仕事から解放される嬉しさと同時に、平日に戻ることへのかすかな憂鬱を含んでいます。完全な喜びだけの時間というものは、実はそう多くありません。この曲がドラマの主題歌として選ばれたことは、単なる偶然ではなく、両者が同じ種類の機微を描こうとしていたことの証明だと思います。
大人の休日という、甘くて酸っぱい時間
50代になり、休日の過ごし方も若い頃とは変わってきました。若い頃の休日は、ただ楽しいことだけを詰め込む時間でしたが、今の休日には、仕事の疲れを整理する時間、家族との関係を見直す時間、自分の来し方を振り返る時間が入り混じっています。純粋な甘さだけの休日は、もうほとんどありません。それでも、そういう甘くて酸っぱい休日の方が、若い頃の一辺倒な楽しさよりも、実は満足度が高いのだと気づくようになりました。
この曲を聴きながら、光石研演じる主人公のような、地味だけれど丁寧な生き方に憧れる気持ちが湧いてきます。大きな成功や派手な出来事を追い求めるのではなく、日々の中にある小さな甘さと酸っぱさを、両方きちんと味わい尽くす生き方。それこそが、歳を重ねてからの本当の豊かさなのかもしれません。
磐田の休日に流れる曲
磐田に戻ってからの休日は、東京にいた頃とはまったく違う質感を持つようになりました。家や土地の相談という仕事柄、平日も休日も明確に区切られているわけではありませんが、それでも、ふと訪れる静かな時間には、この曲のような軽やかさが似合います。相続や空き家の相談で耳にする話には、甘い思い出と酸っぱい後悔が、いつも同じくらいの分量で含まれています。それを無理に整理しようとせず、両方をそのまま受け止める。この曲が教えてくれる態度は、日々の仕事の中でも、大切な指針になっています。
甘さだけの人生も、酸っぱさだけの人生もありません。Sweet and Sour、その両方が同居する日々を、軽やかに歩いていく。この曲を聴くたびに、そういう生き方の心地よさを思い出させてもらっています。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、甘さと酸っぱさが同居する日々の記憶を読み直す場所です。
