失恋した翌朝も、太陽は変わらず昇ります。胸の中がどれだけ乱れていても、目覚まし時計は鳴り、電車は時間通りに来て、仕事は始まります。この当たり前の残酷さと、当たり前の救いを、Nulbarichの「DAY feat. PUNPEE」はアップテンポなビートに乗せて歌います。心の内側で起きている感情の混乱と、外側で淡々と進んでいく1日の時間。この曲のテーマは、その2つの時間の流れのズレにあるのだと思います。悲しみに浸っている暇を、日常はなかなか与えてくれません。それでも、その強制的な日常のリズムこそが、実は人を立ち直らせる力を持っている。ラッパーPUNPEEの飄々とした声がこの曲に加わることで、深刻になりすぎず、それでいて感情の重みを軽視しない、絶妙なバランスが生まれています。
2023年、配信シングルとして
「DAY feat. PUNPEE」は、2023年8月9日にデジタルシングルとしてリリースされました。アルバムに先んじて単独で発表される配信シングルという形式は、今の音楽シーンにおいて、1曲1曲がより独立したメッセージを持てるようになったことの表れでもあります。ラッパーのPUNPEEをフィーチャリングに迎えたこの共演は、Nulbarichが持つR&B・ソウルの感覚と、PUNPEEならではの軽やかなラップワークが混ざり合い、失恋というテーマを湿っぽくせず、むしろ前を向かせる推進力に変えています。
失恋や心の葛藤といったテーマは、ポップスの世界で幾度となく歌われてきました。それでもこの曲が新鮮なのは、感情そのものよりも、その感情を抱えたまま迎える「1日」という、時間の流れの側にフォーカスしている点です。悲しみをどう乗り越えるかではなく、悲しみを抱えたまま、それでもやってくる1日をどう迎えるか。この視点の違いが、この曲を単なる失恋ソングではない、もっと普遍的な曲にしています。
感情と時間の、ズレを生きる
大切な人を見送った翌日、それでも仕事に行かなければならなかった経験が、私にもあります。あのとき、悲しみに向き合う時間もないまま日常に引き戻されることを、薄情なことのように感じていました。けれど今振り返ると、あの強制的な日常のリズムが、実は自分を支えてくれていたのだと分かります。悲しみだけに向き合い続けていたら、きっと立ち上がれなかった。1日という単位が持つ、有無を言わさぬ強制力が、皮肉にも救いになっていたのです。
「DAY」というシンプルなタイトルには、そういう普遍的な真理が込められています。感情は複雑で、時に長く尾を引きますが、1日という単位は、感情の状態に関係なく、律儀に繰り返されます。その繰り返しに身を委ねることでしか、人は本当の意味で前に進めないのかもしれません。この曲のアップテンポなビートは、そうした「進まざるを得ない日常」を、悲観ではなく推進力として描いています。
磐田で迎える、それぞれの1日
磐田で家や土地の相談を受けていると、大切な人を亡くしたばかりの方や、実家を手放す決断をしたばかりの方が、それでも次の1日を、次の手続きを進めなければならない場面に、何度も立ち会ってきました。悲しみが癒えるのを待ってから前に進むのではなく、悲しみを抱えたまま、それでも次の1日を迎えていく。その姿を見るたびに、この曲が描く強さを思い出します。
胸の中がどうであっても、1日はやってきます。それは残酷であると同時に、確かな救いでもあります。この曲を聴くたびに、感情と時間、その両方を大切にしながら生きていくことの意味を、あらためて考えさせられます。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、感情を抱えたまま迎えてきた1日の記憶を読み直す場所です。
