大学生時代、自分がわからなくて、さまよっていました。そんな時に出会った曲です。「自分」というタイトルほど、あの時期の自分の心境にまっすぐ突き刺さる言葉はありませんでした。大学生というのは、社会に出る前の、いちばん自由でありながら、いちばん不安定な時期でもあります。何にでもなれる可能性がある一方で、何になればいいのか、そもそも自分が何者なのかさえ分からない。そういう霧の中を歩いているような日々に、この曲のタイトルは、あまりにも直接的に問いかけてきました。小谷美紗子の声には、答えを押し付けるのではなく、ただ静かに「自分」という言葉を差し出すような、独特の距離感があります。だからこそ、答えの出ない不安を抱えたまま、この曲に寄り添ってもらうことができたのだと思います。
デビュー間もない時期の2ndシングル
「自分」は、1997年2月21日にリリースされた小谷美紗子の2ndシングルです。同年、初のアルバム『PROFILE -too early to tell-』も発売され、3月にはテレビ朝日系音楽番組『ミュージックステーション』へ初出演を果たしています。デビューして間もない時期に、これほど直接的なタイトルの曲を世に出したことには、小谷美紗子自身の、自己と向き合う姿勢が反映されているように感じます。
アルバムタイトルの『PROFILE -too early to tell-』(まだ判断するには早すぎる)という言葉も、この曲のテーマと呼応しています。自分が何者であるかを、まだ結論づけられない段階にいる。そういう、答えの出ない過程そのものを肯定する姿勢が、デビュー作全体を貫いているように思います。
さまよう時期にしか出会えない曲
自分探しという言葉は、時に軽視されがちですが、実際にその渦中にいる人間にとっては、切実な問題です。周りの友人たちが着実に将来を見据えているように見える中で、自分だけがどこにも向かえずにいる。そういう焦りと孤独の中で出会った曲は、その後の人生でも、特別な意味を持ち続けます。「自分」というタイトルの曲に、まさにそのタイミングで出会えたことは、偶然でありながら、必然だったようにも思えます。
答えの出ない問いを抱えたまま、それでも前に進んでいくしかない。この曲は、そういう時期に必要な、静かな伴走者でした。
磐田で振り返る、さまよっていた日々
50代になった今、あの大学生時代のさまよいを振り返ると、あの不安な時間があったからこそ、今の自分の輪郭がゆっくりと形作られていったのだと分かります。磐田で家や土地の相談を受けていると、若い世代の方が、進路や生き方に迷っている場面によく出会います。そのたびに、あの頃の自分と、この曲のことを思い出します。
「自分」というタイトルの曲を聴き続けてきたことは、答えの出ない問いと、焦らずに付き合っていく練習だったのかもしれません。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、自分がわからずさまよっていた時期の記憶を読み直す場所です。
