ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=6lnS-8FVod4
確認した動画: Official髭男dism「Universe」Official Video(公式チャンネル)

夜遅くに実家の片付けをしていると、古いラジカセの奥から、宇宙の写真集が出てくることがある。子どもの頃、なぜか無性に星や惑星の図鑑が好きだった時期が誰にでもあるものだ。Official髭男dismの「Universe」を初めて聴いたとき、真っ先に浮かんだのはそういう記憶だった。壮大な曲なのに、なぜか個人的な、小さな部屋の記憶を連れてくる。今回はこの曲を、曲・歌詞・MVの3つの視点からじっくり見ていきたい。

大石セレクション:曲がいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★★
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★★☆

選定理由:「Universe」は、歌詞やMVを抜きにしても、音の設計だけで十分に成立している楽曲だと感じる。ブラスとコーラスが折り重なるゴスペル的なアレンジ、静かなイントロから徐々に音数が増えていく構成、そしてサビでの解放感。何より、聴くたびに違う場所に連れて行かれるような懐の深さがある。歌詞の物語性やMVの映像美も十分に高い水準だが、この曲の芯にあるのはやはり「音そのものの広がり」だと考え、曲がいいを主視点にした。

映画のための曲として生まれた背景

「Universe」は2021年2月24日にリリースされた、Official髭男dismの5枚目のシングルである。映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトル・スター・ウォーズ)2021』の主題歌として書き下ろされた楽曲で、作詞・作曲はボーカルの藤原聡、編曲はOfficial髭男dism名義でクレジットされている。メジャー2ndアルバム『Editorial』にも収録されており、シングルの中でもひときわスケールの大きな一曲として位置づけられている。

オリコン週間シングルランキングでは初登場3位を記録し、Billboard JAPAN Hot 100の2021年年間チャートでも62位にランクインした。派手な数字というよりも、じわじわと聴かれ続けたことを物語る数字だ。実際、この曲は2022年8月時点で累計ストリーミング1億回再生を突破し、Official髭男dismにとって12曲目の1億再生曲になったという。一過性のヒットではなく、長く聴かれ続けている曲であることがうかがえる。ジャケットには、実際のレコーディングスタジオで使われたキューボックス(演奏者への合図に使う機材)のデザインが取り入れられているというのも、制作陣のこだわりを感じさせるエピソードだ。

曲そのものの魅力を深掘りする

この曲の面白さは、いわゆる「壮大なバラード」の型に素直に収まらないところにある。イントロはピアノを中心とした静かな音数から始まり、そこにブラスとコーラスが少しずつ重なっていく。ドラマチックな展開なのに、押しつけがましさがない。音数を一気に増やすのではなく、じわじわと積み上げていく作り方だからこそ、サビで音が開けたときの解放感が際立つ。

編成にも耳を澄ませたい。ブラスセクションとコーラス隊が、いわゆるブラックミュージック的な質感とゴスペルの高揚感を同時に持ち込んでいて、Official髭男dismのポップな骨格の上に、教会音楽に近い厚みが乗っている。この組み合わせが、「宇宙」という壮大なモチーフと不思議なほど噛み合っている。宇宙的な広さを表現するのに、電子音や無機質なシンセではなく、人の声と生楽器の重なりを選んでいるところに、この曲の温度がある。何度もリピートして聴いても飽きが来ないのは、1番、2番、ラスサビでコーラスの厚みや楽器の配置が少しずつ変化しているからだろう。

歌詞とMVが描いているもの

歌詞を丸ごと引用することはしないが、この曲の言葉は、遠く離れた宇宙的なスケールの話をしているようでいて、実際には「今ここにいる誰か」への眼差しに戻ってくる構造を持っている。壮大な景色を描きながら、最後には身近な誰かとの関係、日々の暮らしの手触りへと降りてくる。だからこそ、SF映画の主題歌でありながら、聴く人それぞれの個人的な記憶と重なりやすいのだと思う。宇宙という言葉を使いながら、実は「自分がどこに立っているか」を問いかけてくる歌詞だ。

MVは、新保拓人監督による、宇宙船を思わせるセットの中でメンバーが演奏する映像を中心に構成されている。派手なCG演出に頼るのではなく、無重力空間のような静けさと、演奏する4人の表情を丁寧に映すことに重心が置かれている。公開に先立って2021年2月12日にはメイキング映像も公開されており、制作陣がこの世界観をどれだけ丁寧に作り込んだかが伝わってくる。曲の壮大さと、映像の静かな佇まいのバランスが良く、音だけで聴いていたときには気づかなかった「宇宙船の中の静けさ」を、MVがあらためて教えてくれる。

実家の片付けと、広がっていく世界の話

この記事を書いている大石浩之は、静岡県磐田市で介護と不動産の仕事をしている。東京にいた若い頃は、正直、自分の生活圏の外側にどれほど広い世界があるかなんて、あまり考えたことがなかった。毎日の仕事と生活を回すだけで精一杯で、視野は自然と狭くなっていく。

磐田に戻って介護の仕事に就き、その後、不動産の相談や実家の片付け、空き家の整理といった仕事にも関わるようになってから、少しずつ考え方が変わった。ある高齢のお客様の家を整理していたとき、押し入れの奥から、若い頃に撮ったという星空の写真と、天体観測の手帳が出てきたことがある。その方は生涯、磐田という一つの土地でほとんどの時間を過ごしてきた人だったが、若い頃は星を見上げて、宇宙のことをずっと考えていたのだという。人の人生は、住んでいる場所や仕事の範囲は狭くても、頭の中で見ている景色はとても広いことがある。「Universe」を聴くと、そのときの手帳と写真のことを思い出す。目の前の暮らしを整えることと、遠い宇宙に思いを馳せることは、実は同じ人の中で矛盾なく共存できるのだと、この曲が教えてくれる気がする。

アルバム『Editorial』の中の立ち位置と、何度も聴きたくなる理由

「Universe」が収録されているメジャー2ndアルバム『Editorial』は、Official髭男dismがバンドとしての幅を大きく広げた作品として語られることが多い。タイトルの「Editorial(論説、社説)」という言葉が示すように、このアルバムには、時代や社会に対して自分たちなりの視点を投げかけるような曲が並んでいる。その中で「Universe」は、社会的なテーマを直接的に歌うのではなく、もっと大きな時間軸、もっと大きな空間軸から人の営みを見つめ直すような役割を担っている。アルバムを通して聴くと、「Universe」の壮大さが唐突なものではなく、バンドが元々持っていた視野の広さの延長線上にあることがよくわかる。映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトル・スター・ウォーズ)2021』の主題歌として書き下ろされたという事実も見逃せない。子ども向けの映画のために作られた曲でありながら、歌詞やアレンジには、大人が聴いても十分に深く刺さる要素が詰め込まれている。子どもの頃に見た夜空の記憶と、大人になってから見上げる夜空は、同じ星でも見え方が違う。この曲は、その両方の年代の聴き手に向けて書かれているように感じられる。

繰り返し聴いていて気づくのは、この曲が「盛り上がる曲」であると同時に、「静かに聴ける曲」でもあるという点だ。車の中で大きな音量で流しても気持ちがいいし、夜、イヤホンで小さな音量で聴いても、ブラスとコーラスの重なりが丁寧に耳に届く。ダイナミクスの幅が広いからこそ、聴くシチュエーションを選ばない。忙しい一日の始まりに聴けば背中を押してくれるし、一日の終わりに聴けば、ここまでの自分を少し肯定してくれるような感触がある。藤原聡のボーカルも、この曲では終始丁寧にコントロールされている。サビで声を張り上げるだけでなく、Aメロやブリッジでは意図的に抑えた歌い方をしていて、その抑制があるからこそ、サビでの解放感が際立つ。声の強弱と、バンドの音数の増減がぴったり連動している構成は、何度聴いても飽きが来ない大きな理由の一つだろう。

参考リンク

宇宙のように広い景色も、実家の片付けのように小さな作業も、同じ一人の人生の中に同居している。

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書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。