タクシーというのは、乗り合わせた見知らぬ者同士が、目的地に着くまでの短い時間だけ、同じ空間を共有する乗り物です。「ODDTAXI」というタイトルの奇妙なタクシーには、そういう一期一会の出会いの気配が漂っています。この曲を歌うスカートとPUNPEEは、実は同じ板橋区の出身という共通点を持ちながら、これまでまったく交流のなかった2人でした。同じ町で育ちながら、まったく違う音楽の道を歩んできた2人が、あるアニメ作品をきっかけに、初めて同じ車に乗り合わせる。この曲の成り立ちそのものが、タイトルの「奇妙なタクシー」という設定を、現実の中でなぞっているように感じられます。
板橋という共通点から生まれた出会い
「ODDTAXI」は、2021年4月7日にリリースされた楽曲で、PUNPEEが劇伴を担当したTVアニメ『オッドタクシー』のオープニングテーマとして書き下ろされました。スカートとPUNPEEには、板橋出身という共通点がありながら、これまで直接の交流はなかったといいます。きっかけとなったのは、2020年11月に行われたPUNPEEの配信ライブでの共演でした。そこでのセッションを経て、この異色のコラボレーションが実現しています。
制作プロセスも興味深いものです。スカートの澤部渡が最初に送ったギターリフとフックのメロディーで、この曲のコンセプトが一瞬で見えたといいます。その後、2人で編曲を重ね、澤部はタクシーに乗る度に運転手からよく聞く話をヒントに、歌詞を練り上げていきました。日常の中にある小さな取材の積み重ねが、この曲のリアリティを支えています。
同じ町で育っても、違う道を歩む
東京で働いていた頃、同じ出身地の人と出会うと、それだけで不思議な親近感を覚えることがよくありました。けれど、同じ町で育ったからといって、必ずしも同じ時期に交流があるとは限りません。人生の道は、地理的な近さとは関係なく、それぞれの選択によって分かれていきます。スカートとPUNPEEのように、同じ町の出身でありながら、それぞれ独自の音楽性を育て、まったく交わらないまま長い時間を過ごしてきた例は、決して珍しいことではないのだと思います。
けれど、そういう離れた道を歩んできた者同士が、ある偶然のきっかけで交差したとき、そこには思いがけない化学反応が生まれます。「ODDTAXI」というタイトルの奇妙さは、まさにそういう、予定調和ではない出会いの妙を表しているのだと思います。同じ町で育ちながら別々の人生を歩んできた2人が、1台のタクシーに乗り合わせたときにだけ生まれる、特別な会話。この曲は、その一期一会の豊かさを、見事に音楽として結晶させています。
磐田で乗り合わせる、それぞれの道
磐田という同じ地域で暮らしていても、それぞれがまったく違う人生の道を歩んでいます。家や土地の相談の仕事をしていると、同じ町の出身でありながら、これまで一度も接点のなかった方々と、初めて言葉を交わす機会が数多くあります。地理的な近さは、必ずしも人と人をつなげるわけではなく、ある偶然のきっかけがあって初めて、その距離は縮まります。
「ODDTAXI」が見せてくれた、同じ町の出身者同士の思いがけない交差は、地域に根ざした仕事をする上でも、大切な視点を与えてくれます。同じ場所で育った者同士だからこそ通じ合えるものと、それでも交わることのなかった時間の両方を尊重しながら、これからも人との出会いを大切にしていきたいと思います。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、同じ町で育ちながら交差した出会いの記憶を読み直す場所です。
