Suchmosの「FUNNY GOLD」は、ワンショットフィルムという形式そのものが、この曲の性格をよく表しています。編集で切り貼りせず、一つの流れとして撮り切る映像は、演奏や歌の勢いをそのまま閉じ込めています。この曲は2018年6月20日にリリースされたミニアルバム『THE ASHTRAY』に収録されており、自主レーベルF.C.L.S.からの作品です。バンド初のラブバラードナンバーとして紹介されることが多く、それまでのSuchmosが得意としてきたアッパーなグルーヴ感とは異なる、より内省的な側面を見せた楽曲でもあります。ブラックミュージックに根ざしたグルーヴと、都会的で少し気だるい空気感が同居するこの曲は、聴くたびに夜の街のネオンや、少し湿った空気を思い出させます。
FUNNY GOLDというタイトルには、皮肉と輝きの両方が込められているように感じます。すべてがうまくいく黄金の時間ではなく、どこかいびつで、それでも確かに輝いている時間。Suchmosの音楽が持つ独特の色気は、完璧さよりも、そうした不完全な輝きを肯定するところにあります。
自主レーベルが選んだ、バラードという冒険
Suchmosは神奈川県出身のメンバーで結成されたバンドで、アシッドジャズやヒップホップに影響を受けたサウンドで知られています。「STAY TUNE」などのアッパーな曲で広く知られるようになった彼らが、自主レーベルからのミニアルバム『THE ASHTRAY』で初めてラブバラードに正面から取り組んだという事実は、バンドが自分たちのペースで音楽性を広げていったことを示しています。メジャーな枠組みの中で期待される曲調だけを繰り返すのではなく、自分たちのレーベルだからこそ試せる曲を『THE ASHTRAY』に収めた。その姿勢が、FUNNY GOLDという少しひねりの効いたタイトルにも表れているように感じます。
ワンショットフィルムという撮り方には、やり直しのきかない一回性への信頼があります。バラードという新しい表現に踏み出した曲を、あえて編集なしの一発撮りで見せるという判断にも、飾らずに勝負するバンドの姿勢が透けて見えます。
東京の夜に流れていたグルーヴ
東京で働いていた頃、仕事終わりの夜に聴く音楽は、その日の疲れをどう処理するかを左右していました。ある取引が土壇場で流れてしまった日、上司からの叱責もあり、その夜は誰にも会わずにひとりで飲み歩いたことがあります。「FUNNY GOLD」のようなグルーヴ感のある曲は、疲れをただ癒すのではなく、疲れごと一緒に揺らして流してくれるような感覚がありました。都会の夜は、静かなようでいて、実際には様々な音や光が複雑に絡み合っています。この曲のサウンドは、その混沌とした空気とどこか呼応していました。
仕事の帰り道、電車の窓に映る自分の顔を見ながらこの曲を聴くと、うまくいかなかった一日も、悪くなかったのかもしれないと思えることがありました。ファニーゴールドという言葉が示す通り、完璧ではないけれど確かに価値がある時間。東京での日々は、そうした不完全な輝きの積み重ねだったのだと、今振り返ると分かります。
磐田で見つける、静かな輝き
磐田に戻ってからの日々は、東京のようなネオンの輝きとは違う、もっと静かな輝きに囲まれています。夕方の田んぼに反射する光、家々の窓から漏れる明かり、家族が集まる食卓の温度。派手さはありませんが、「FUNNY GOLD」というタイトルが示す不完全な輝きは、こうした日常の中にも確かに存在しています。
家や土地の相談を受ける仕事の中では、うまくいかなかった選択や、後悔の残る決断について話を聞くことがよくあります。すべてが理想通りにいく人生は、なかなかありません。それでも、その不完全さの中に、確かな輝きや意味を見出すことはできます。Suchmosが自主レーベルからバラードという新しい挑戦を送り出したように、慣れたやり方を離れて新しい選択をする勇気は、家や土地を手放す決断をする方々にも通じるものがあります。ATAWI MUSICにこの曲を置くのは、完璧ではない毎日の中にこそ、確かな価値があることを、音楽を通して思い出すためです。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、人の暮らし、仕事、家、土地、記憶をもう一度読み直す場所です。
