ページ作成日: 2026年7月3日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=WXk69QJ-Wr4
確認した動画: Suchmos – MINT [Official Music Video](SPACE SHOWER公式系チャンネル)

大石セレクション:MVがいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★☆
  • 歌詞がいい:★★★☆☆
  • MVがいい:★★★★★

選定理由:「MINT」は曲そのものの完成度も高いが、この曲を語るうえで欠かせないのは、リーバイスとのコラボレーション企画として公開された公式ミュージックビデオである。メンバーそれぞれが別の場所から出発し、最終的に神奈川県茅ヶ崎市に集まってくるという構成そのものが、「仲間」というこの曲のテーマを、言葉よりも先に映像として提示している[3][7]。宣伝色を感じさせず「自然体」にこだわったという制作姿勢も、YONCEたちが語るインタビューから裏づけられる[5]。曲、歌詞、MVのすべてに魅力があるが、映像を見ることでこの曲の意味が最も深まる一曲だと感じたため、主視点はMVがいいに置いた。

「MINT」は、2016年7月6日にSPACE SHOWER MUSICからリリースされたSuchmosの3rd EP『MINT CONDITION』のリード曲で、同年6月24日から先行配信されました。この曲が生まれた背景を調べていて印象に残ったのは、Oasisのライブ映像作品からの影響を受けながら、バンド自身が「Suchmosのアンセム」となることを最初から意識して作ったと伝えられている点です。アンセムという言葉には、ひとりで聴く曲というより、大勢で肩を並べて口ずさむ曲という響きがあります。歌詞の中身には立ち入りませんが、バンドの6人と、その場にいる観客までを含めて描くような、大きなスケールの世界観を持って作られたと評されています。ミュージックビデオは、ジーンズブランドのリーバイスとの協業企画「THE LIVE IN LEVI'S PROJECT」の一環として制作されました。メンバーそれぞれが別の場所で個別に撮影を行い、最終的に神奈川県茅ヶ崎市に全員が集合するという構成を取っており、サイクリングロードや海辺の岬など、茅ヶ崎の風景がそのまま映像に刻まれています。バラバラの場所にいた者たちが、ひとつの土地に集まってくる。その映像の構成そのものが、この曲が持つ「仲間」というテーマを、言葉より先に伝えているように感じます。「STAY TUNE」でシーンに登場し、瞬く間に注目を集めていったSuchmosにとって、『MINT CONDITION』は自分たちの立ち位置を自ら定義し直すような作品だったのではないかと思います。急激に名前が広まっていく中で、あらためて「自分たちは何を鳴らすバンドなのか」を問い直す時期に、仲間や観客との関係を正面から描く曲を作った。その順番自体に、意味があるように感じます。

アンセムとして作られた曲

「MINT」がほかのSuchmosの曲と少し違って聴こえるのは、最初から「アンセム」として設計された曲だからではないかと思います。ライブハウスで観客と一緒に歌うことを前提にした曲と、レコーディングのために練り上げられた曲とでは、同じバンドでも生まれ方が変わってきます。コード進行にはGM7、Em7、Bm7、Am7onDからG#7へと移る展開が用いられていると紹介されており、都会的で少しメランコリックな響きを保ちながらも、サビに向かって開けていくような上昇感がある構成です。音楽メディアの批評では、メロディが「深い幸福感を呼び起こす」と評されたり、ファンクを軸にしたオーガニックなサウンドデザインが評価されたりしています。それまでのSuchmosが得意としてきた、都会の夜を思わせるクールで脱力した質感に、この曲では一歩踏み込んだ高揚感が加わっている。派手に盛り上げるのではなく、じわじわと気持ちを持ち上げていくような構成に、丁寧に設計された跡を感じます。イントロから性急にサビへ向かうのではなく、コード進行がゆるやかに上下しながら少しずつ温度を上げていく作りは、ライブの現場で観客の熱量がじわじわと高まっていく様子と重なって聴こえます。一気に盛り上げて終わる曲ではなく、何度もこの曲を聴き、何度もこの曲を歌う中で、少しずつ体に馴染んでいくタイプの曲なのではないかと思います。

EP全体のタイトルである『MINT CONDITION』という言葉には「新品同様の状態」という意味があり、ジャケットにもジーンズをモチーフにしたデザインが採用されたと伝えられています。前作のシングル「LOVE & VICE」から約5カ月半での作品で、「ストリート」への原点回帰と、仲間への想いをまっすぐに表現した内容だったと紹介されています。派手な実験に走るのではなく、自分たちの足元にあるものを見つめ直す。そういう作品の中に置かれたリード曲だからこそ、「MINT」の持つ開放感には、気負いのない自然さが宿っているのだと思います。

各地から茅ヶ崎に集まってくる映像

ミュージックビデオを手がけたのは映像制作会社maxillaで、リーバイスというブランドとの協業という形を取りながらも、宣伝色の強い作りにはなっていません。メンバー全員がリーバイスのジーンズを愛用していたことがきっかけで始まった企画だと伝えられており、無理に作られたタイアップというより、もともとの生活の延長線上にある協業だったようです。映像は各メンバーが別々の場所で撮られたパートから始まり、最後に茅ヶ崎という土地に全員が集まってくる構成になっています。ドラムのOKが動物園で撮影したパートは、映像全体の「ストリート」的な世界観と合わないという理由でカットされたとも伝えられており、統一感を保つための取捨選択が丁寧になされていたことがうかがえます。バラバラに動いていた人間が、最後にひとつの場所に落ち着く。そういう構成を持つ映像だからこそ、「MINT」という曲全体に漂う開放感が、より説得力を持って響いてくるのだと思います。

この曲は2016年のMTV Video Music Awards Japanで最優秀新人アーティストビデオ賞を受賞し、Billboard Japan Hot 100では6位、ラジオソングチャートでは1位を記録したと伝えられています。派手な仕掛けに頼らない曲が、これだけの評価と反響を得たという事実は、丁寧に積み上げられた構成そのものが、聴き手にきちんと届いていたことを示しているように思います。

東京で離れていった同僚たちのこと

東京で働いていた頃、同じ部署にいたメンバーが、異動や転職でひとりずつ違う場所に散っていく時期がありました。プロジェクトが終わるたびにチームは解散し、次の現場ではまた新しい顔ぶれと仕事をする。その繰り返しの中で、一緒に苦労した人たちと、また同じ場所で集まる機会は驚くほど少なかったように思います。「MINT」のミュージックビデオのように、それぞれが別の場所で過ごした時間を経て、ある日ふと同じ土地に集まる。そういう機会が実際の仕事の中でどれだけ貴重だったか、今になって強く感じます。忘年会や送別会で久しぶりに顔を合わせたとき、数年ぶりでも当時の空気にすぐ戻れることに驚いた記憶があります。離れていた時間の長さよりも、一度同じ場所で肩を並べて働いたという事実の方が、ずっと強く残るのだと思います。

あるプロジェクトで一緒だった同僚とは、解散後に一度だけ、当時の現場の近くで待ち合わせをしたことがあります。それぞれ違う部署に異動し、扱う仕事も、付き合う人間関係もすっかり変わっていました。それでも、同じ場所に立って昔話をした瞬間、当時の緊張感や達成感がそのまま蘇ってきたのを覚えています。土地には、そこで過ごした時間を記憶として留めておく力があるのかもしれません。人は移動し、関係は薄れていくように見えても、同じ場所に戻れば、当時の空気を丸ごと取り戻すことができる。「MINT」のミュージックビデオが茅ヶ崎という具体的な土地を舞台に選んだことにも、通じるものがあるように感じます。

アンセムという言葉が示す通り、「MINT」は個人の物語というより、集団の物語として作られた曲です。ひとりで完結する曲ではなく、誰かと一緒にいるときにこそ意味を持つ曲。東京での仕事も、振り返れば個人プレーで成し遂げたことより、誰かと肩を並べて乗り越えた出来事の方が、記憶に深く残っています。結果を出した瞬間の高揚感よりも、その結果に至るまでの過程を共有した仲間との時間の方が、年月が経ってからも色褪せずに残っているのだと思います。

磐田で、土地に集まってくる家族と仕事

磐田で家や土地の相談を受ける仕事をしていると、遠方に散らばっていた家族が、実家の処分や相続をきっかけに、一度この土地に集まってくる場面によく立ち会います。普段は離れて暮らし、それぞれ違う生活を送っている家族が、空き家になった実家の前で顔を合わせる瞬間には、独特の緊張と、同時にどこか懐かしさの入り混じった空気があります。「MINT」のミュージックビデオで、各地に散っていたメンバーが茅ヶ崎という土地に集まってくる構成を思い出すと、この仕事で立ち会う家族の集合も、それに近いものがあるように感じます。土地というものは、人を再び集める力を持っています。

ある相談では、県外に出た兄弟姉妹が3人とも、それぞれ違う土地から磐田の実家に集まってこられたことがありました。長らく顔を合わせていなかったという3人でしたが、実家の縁側に座って昔の思い出話を始めると、すぐに子どもの頃のような掛け合いに戻っていったのが印象的でした。土地には、そこにいた人間関係をそのまま呼び覚ます力があります。空き家をどうするかという現実的な相談の場でありながら、同時にそれは、離れていた家族がもう一度ひとつの場所に集まる、貴重な機会でもあります。「MINT」の映像が茅ヶ崎という土地に人を集めたように、実家という土地もまた、人を静かに呼び戻しているのだと感じます。

自宅で家族と過ごす時間にも、似たような感覚があります。仕事でそれぞれ別の場所に出かけていた家族が、夕方になると同じ食卓に戻ってくる。その繰り返しの中に、特別ではないけれど確かな安心があります。「MINT」がアンセムとして持っている高揚感は、ひとりで浸る種類のものではなく、誰かと同じ場所で分かち合うときに初めて意味を持つ種類のものです。磐田という土地で、離れていた人たちが再び集まってくる場に立ち会う仕事を続けていると、この曲が描こうとした「仲間」というテーマの温度が、少しずつ分かってくるように思います。

もう一度、同じ場所に立つということ

Suchmosはその後、2021年2月から活動を休止し、2025年6月21日と22日、横浜アリーナでのワンマンライブ「The Blow Your Mind 2025」をもって再始動したと伝えられています。2019年9月の横浜スタジアム公演以来、5年8カ月ぶりの有料公演だったとされ、多くのチケット応募が集まる盛況となったと報じられています。長く別々の道を歩んでいたメンバーが、再び同じステージに立つというその歩み方自体が、「MINT」という曲が最初から持っていたテーマと、静かに重なって見えます。休止期間中、メンバーそれぞれがどんな時間を過ごしていたのかは分かりませんが、久しぶりに集まったステージの上で、以前と変わらない一体感を取り戻せたのだとしたら、それは「MINT」が描いていた「仲間」というテーマが、バンド自身の歩みの中でも証明された瞬間だったのではないかと思います。

離れていた時間があったからこそ、再び同じ場所に立ったときの意味が、より深くなるのかもしれません。仕事でも家族でも、離れている時間があること自体は、決して悪いことではないのだと思います。大切なのは、離れていた者たちが、また同じ場所に戻ってこられるかどうかです。磐田で日々向き合っている家や土地の相談も、突き詰めれば、離れてしまった人と人、あるいは人と土地との関係を、もう一度結び直す仕事なのかもしれません。「MINT」を聴くたびに、そのことを静かに思い出します。