「ツバメ」は、NHKのSDGs番組シリーズ「ひろがれ!いろとりどり」のテーマ曲として、YOASOBIのAyaseが作詞・作曲を手がけた楽曲だ[1]。原曲では、子供ユニットのミドリーズと、YOASOBIのボーカルであるikuraが歌声を重ねている。東京スカパラダイスオーケストラは、この曲を自分たちのアレンジで演奏する「スカパラバージョン」を手がけ、バンドのドラマー兼ボーカル・茂木眞一郎とミドリーズ、長濱ねるが歌唱を担当した[1]。ここで紹介する映像は、その中でもikuraが自ら参加した、2022年の野外フェス「SWEET LOVE SHOWER」でのライブパフォーマンスの記録だ。
NHKのテーマソングから、フェスのアンセムへ
「ひろがれ!いろとりどり」は、多様性や共生をテーマにしたNHKのSDGs関連番組シリーズであり[1]、「ツバメ」はそのテーマソングとして作られた楽曲だ。ミドリーズと東京都立片倉高等学校吹奏楽部が参加した原曲のクレジットからも分かる通り[1]、この楽曲はもともと、世代や立場を越えて多くの人が参加できることを大切にした企画だった。東京スカパラダイスオーケストラがこの曲を自分たちのバージョンとしてアレンジし、さらにその演奏に原曲の生みの親であるikuraを迎えたという流れは、この楽曲が持つ「多くの人の手で育てられていく」というコンセプトを、そのまま体現しているように見える。テレビ番組のテーマソングとして生まれた曲が、真夏の野外フェスの大合唱へと羽ばたいていく。その軌跡自体が、ひとつの物語になっている。
吹奏楽の情熱と、ホーンセクションの熟練が出会う場所
原曲では高校の吹奏楽部が演奏に参加しているのに対し[1]、スカパラバージョンでは、プロのホーンセクションがその役割を引き継いでいる。若い世代の情熱と、長年にわたって磨き上げられてきたプロフェッショナルの技術。このふたつが同じ曲の中で受け継がれていく構図は、「ツバメ」というタイトルが持つ、渡り鳥のように世代を越えて受け継がれていくものというイメージとも重なって見える。原曲の持つポップで親しみやすいメロディに、スカパラならではの厚みのあるアレンジが加わることで、テレビ番組のテーマソングという枠を越えた、堂々としたライブアンセムへと成長している。
大観衆が映し出す、開かれた音楽の力
MVの冒頭で捉えられている、SWEET LOVE SHOWER 2022の会場を埋め尽くす観客の空撮映像は、この曲が持つスケール感を何よりも雄弁に語っている。無数の人々が同じ空の下でひとつの曲を共有している光景は、「ツバメ」という一羽の鳥のイメージから、はるかに大きな広がりへと視点を転換させる力を持っている。ikuraがステージに登場する瞬間、原曲の生みの親自身がスカパラのアレンジの中に飛び込んでいくという特別な出来事が、大観衆の前で繰り広げられる。この場面の高揚感は、音源だけを聴いていたのでは決して味わうことのできない、ライブならではの一体感だ。
受け継がれることを、恐れない
NHKのテーマソングとして生まれ、スカパラのアレンジで新しい命を吹き込まれ、さらに原曲の作り手自身がその場に舞い戻ってくる。「ツバメ」という曲がたどってきたこの道のりは、ひとつの楽曲がジャンルやアーティストの垣根を越えて受け継がれ、育っていくことの豊かさを教えてくれる。誰かの手を離れることを恐れず、むしろ多くの手に渡ることで曲そのものが成長していく。この曲は、そうした音楽の在り方を、フェスという開かれた場所で証明してみせた一曲だ。
茂木眞一郎という、歌うドラマーの存在感
スカパラバージョンでボーカルを担当した茂木眞一郎は、バンドのドラマーであると同時に、ボーカリストとしても活動してきた人物だ[1]。演奏する立場と歌う立場の両方を知るメンバーが、ミドリーズや長濱ねるという若い歌い手たちと声を重ねることで、単なるカバーではなく、世代を越えたひとつのアンサンブルとして成立している。ドラムスティックを握る手で刻んできたリズムの経験が、歌声のフレージングにも自然と滲み出ているのではないかと想像すると、この曲の厚みにも納得がいく。バンドの内側から声を出せるメンバーがいるという事実は、外部のゲストボーカルを迎える機会が多いこのバンドにとって、実は大きな強みになっているのだと思う。外部から迎えたゲストがいなくなっても、バンド自身の中に歌える人材がいれば、その曲を自分たちの持ちうたとして長く演奏し続けることができる。ミドリーズや長濱ねる、そしてikuraという、それぞれ立場の異なる歌い手たちをまとめ上げる役割を、茂木眞一郎という内部の存在が担っていたからこそ、このステージは成立したのだろう。縁の下でバランスを取る存在の大切さを、あらためて感じさせられる一曲だ。大観衆の前で複数の世代が声を合わせるあの瞬間は、誰か一人の力だけでは決して作れなかったものだ。夏空の下に響いたその歌声は、これからも多くの人の記憶に残り続けるだろう。一羽のツバメが、こうしてまた新しい夏を渡っていく。次にどんな仲間を連れて戻ってくるのか、その先の旅路も楽しみでならない。世代を越えて手渡されていく歌の力を、これからも信じていたい。
参考リンク
- [1] 東京スカパラダイスオーケストラ「ツバメ feat.ミドリーズ & 長濱ねる & 東京都立片倉高等学校吹奏楽部」歌詞 - 歌ネット
- [2] スカパラ、ミドリーズ&長濱ねるを迎えた「ツバメ」スカパラバージョンの配信が決定 - THE FIRST TIMES
- [3] スカパラが演奏する幾田りらの「ツバメ」を聴いてほしい - note
一羽のツバメが多くの手を経て空高く羽ばたくように、住まいもまた、次の世代へと丁寧に受け継がれていくものです。
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