ページ作成日: 2026年7月5日
元にしたYouTubeリンク: https://www.youtube.com/watch?v=Tzyt91TYjLA
確認した動画: life hack / Vaundy♪MUSIC VIDEO(Vaundy公式)

ヒットというものは、必ずしも一気に駆け上がるものではないらしい。Vaundyの「life hack」を聴き返すたびに、そのことを思う。2020年3月23日、Vaundyにとって4枚目の配信シングルとして発表され[1][4]、同年5月27日の1stアルバム『strobo』に5曲目として収録されたこの曲は[3]、発表直後にBillboard JAPANの総合チャートでトップ100入りした実績を持たないまま、それでも新曲が出るたびに少しずつ順位を戻し、じわじわとトップ300圏内を歩き続けたと伝えられている[1]。そして2023年4月26日、リリースからおよそ3年を経て、ストリーミング累計1億回再生という節目に到達した。Billboard JAPANによれば、これはVaundy自身9曲目の1億回再生曲になったという[1]。一度に駆け抜けるのではなく、時間をかけて聴かれ続けることで積み上がっていった数字だ。私はこの曲の背景を知ってから、「life hack」というタイトルの意味を、少し違う角度で受け止めるようになった。本来は仕事や生活を効率化するための工夫を指す言葉を、Vaundyは恋愛というテーマに転用している[6]。だがこの曲自体の歩みもまた、一種のライフハックだったのではないか。派手な近道はなく、ただ丁寧に、じわじわと積み重ねていく。作詞・作曲・プロデュースをVaundy自身が手がけ、女性コーラスにさとうもかを迎えたこの曲を聴いていると[2][6]、東京で働いていた頃の、ある感覚を思い出す。成果はすぐには出ない。それでも積み重ねたものは、ある日ふと、誰かに届く形になっている。磐田に戻り、家や土地、家族の話を日々聞く仕事をしている今、この曲がゆっくりと聴かれ続けてきた歩みは、他人事とは思えないところがある。

大石セレクション:曲がいい ★★★★★

  • 曲がいい:★★★★★
  • 歌詞がいい:★★★★☆
  • MVがいい:★★★☆☆

選定理由:「life hack」の最大の強さは、派手な初速に頼らず、3年という時間をかけてストリーミング累計1億回再生まで届いた、その曲自体の持久力にある[1]。サビで一気に感情を爆発させるのではなく、終始抑えた温度感を保ちながら、さとうもかのコーラスと重なり合う声の設計[2][6]。この、じわじわと効いてくる音の作り方こそが、タイトルの「hack」という言葉にいちばんふさわしいと感じた。歌詞やMVもそれぞれ魅力的で、特にMVは「愛の距離感」という明確なテーマを持つ良作だが[4][5]、時間をかけて多くの人に届いていったという曲そのものの歩みを語れる強さという点で、主視点は曲がいいに置いた。

じわじわと届いた、ロングテールの1億回再生

「life hack」がストリーミング累計1億回再生を突破したのは、Billboard JAPANが伝えるところによれば2023年4月26日のことで、これはVaundyにとって自身9曲目の1億回突破だったという[1]。同記事によれば、この曲はリリース当初、Billboard JAPANの総合チャートでトップ100入りした経験がないまま、それでも新曲が出るたびに順位を少しずつ伸ばし、トップ300圏内を維持し続けていたとされる[1]。派手な初動で駆け抜ける曲ではなく、時間をかけて聴かれ続けることで数字を積み上げていった、そういう性質の楽曲だったのだろう。個人的には、この「じわじわ」という歩み方こそが、タイトルの「hack」という言葉にふさわしい気がしている。一発逆転ではなく、小さな積み重ねが結果につながる。それは音楽の届き方としても、人生の多くの場面としても、覚えのある感覚だ。

この曲が9曲目の1億回再生曲になったという事実にも、少し立ち止まる価値がある[1]。これは瞬間的な話題性だけでは到達しない領域の数字なのだろうと想像する。ヒットチャートというものは、しばしば初動の勢いばかりが語られがちだが、「life hack」の歩みが教えてくれるのは、聴かれ続けることそのものが持つ静かな強さだ。一度リリースされた曲は、アーティストの新作が出るたびに、また誰かのプレイリストに紛れ込み、思い出したように聴き直される。そうした地道な再生の積み重ねが、数年越しに大きな数字へとつながっていく。効率化を意味する「hack」という言葉とは裏腹に、この曲がたどった道のりは、実のところかなり時間のかかる、地に足のついたプロセスだったのかもしれない。

離れていた聴き手が、何かのきっかけでまた曲に戻ってくる。それは楽曲の再生数の話であると同時に、人と人との関係にも似たことが起きるのではないかと思わされる。しばらく疎遠になっていた相手と、ふとした瞬間にまた言葉を交わすようになる。そのきっかけは、大きな出来事である必要はなく、ちょっとした偶然や、誰かが背中を押す一押しであることが多い。「life hack」というタイトルが持つ含意は、一度きりの工夫ではなく、離れてはまた近づく、そうした繰り返しの中にこそ宿っているように思える。

さとうもかのコーラスと、恋愛に転用された「工夫」

この曲のコーラスを務めたのはさとうもかである[2][6]。楽曲そのものは、Vaundy自身が作詞・作曲・プロデュースを手がけ、ジャケットのアートディレクションをMargt(PERIMETRON)が担当したとされる[2][6]。ラブソングとしての輪郭を持ちながら[2]、そこにさとうもかの声が重なることで、ひとりの語りではなく、ふたりの呼吸が感じられるような広がりが生まれているように聴こえる。「life hack」というタイトルを恋愛というテーマに転用する発想そのものが、Vaundyらしい言葉の飛躍だと思う。愛情は理屈で割り切れるものではないが、それでも、うまくいく関係にはちょっとした工夫や間合いの取り方のようなものが確かに存在する。この曲が描いているのは、そういう、感情にも工夫の余地があるという、地に足のついた発見なのではないかと感じている。ミュージックビデオは「愛の距離感」をテーマに、映像制作チームUNDEFINED(19歳の映像クリエイターMIZUNO CABBAGE率いる)が手がけたと報じられており[4][5]、当時13歳の現役中学生ダンサーTSUKUSHIと、「ミスSNS 2019」準グランプリの雪見みとが出演したとされる[4]。言葉だけでは説明しきれない距離の機微を、身体の動きで補っているようにも見える。

音の作りに耳を澄ませると、この曲はサビに向けて感情を爆発させるというよりも、終始どこか抑えた温度感を保ったまま進んでいくように聴こえる。ボーカルの前に出過ぎない歌い方、さとうもかのコーラスが被さる箇所での声の重なり方には、ふたりの距離をそのまま音像に置き換えたような、慎重さのようなものを感じる。派手なサウンドで押し切るのではなく、間や余白を残しながら聴き手に想像の余地を渡してくる作りは、恋愛における「近づきすぎない工夫」というテーマとも呼応しているように思える。ふたつの声が同じ旋律を歩調を合わせてなぞる瞬間、そこにあるのは対立でも埋没でもなく、ちょうど良い距離を保ったまま重なり合う関係のように聴こえてくる。歌詞そのものを長く引用することは避けるが、「気にしないでいること」を選び取る心の動きや、未来をあらかじめ決めつけない生き方への言及があると各所で紹介されており、固定観念に縛られずに関係を見つめ直そうとする視線が、この曲の言葉には流れているように感じる。恋愛の歌でありながら、相手との距離だけでなく、自分自身との距離の取り方までも同時に歌っているように読める点が、この歌詞の奥行きだと思う。

「愛の距離感」を描いたMVと、曲との距離

公式MVは、映像制作チームUNDEFINEDを率いる当時19歳の映像クリエイター、MIZUNO CABBAGEが手がけ、「愛の距離感」というテーマのもとに制作されたと報じられている[4][5]。出演したのは、当時13歳の現役中学生ダンサーであるTSUKUSHIと、「ミスSNS 2019」で準グランプリを受賞した雪見みとの二人で、撮影・照明のクレジットも明記されたうえで公開されている[4]。ダンスという身体表現を軸に置いたことで、歌詞が言葉にしきれない「近づきたいのに近づきすぎない」という緊張感を、二人の距離の取り方そのもので見せる構成になっている。テーマが明確で、キャスティングや制作体制もしっかり組まれた、完成度の高い一本だと思う。ただ、この曲の場合、MVを見なくても音源だけで十分に世界観が伝わってくる強度がすでにあり、3年かけて1億回再生に届いたという歩みも、映像の有無に左右されない曲そのものの力によるところが大きい[1]。だからこそ、MVは曲の理解を助ける良質な補助線でありながら、主役はあくまで曲そのものだという印象を持っている。

東京で覚えた、積み重ねの手応え

東京で働いていた頃、成果というものはすぐには出ないのだと、何度も思い知らされた。人間関係も仕事も、闇雲に力を入れるだけではうまくいかない。むしろ、小さな工夫や間の取り方を積み重ねたほうが、結果的に物事は驚くほどスムーズに運ぶことがある。「life hack」という言葉が本来指しているのは、そういう地味な積み重ねの効用だ。この曲が、リリース直後の派手な瞬間風速ではなく、3年という時間をかけてじわじわと1億回再生に到達したという歩み方は、当時の自分が仕事の中で覚えていった感覚と、どこか重なって聴こえる。焦って結果を求めるほど空回りし、逆に、目の前のことを一つずつ丁寧に積み上げていったときのほうが、気づけば遠くまで届いていた。恋愛にも、仕事にも、共通する工夫のかたちがあるのだと思う。

当時の職場に、何をやってもすぐに結果を求めたがる先輩がいた。焦りが伝わるほど、周りは身構えてしまい、かえって物事が進まなくなる。逆に、地味でも一つずつ丁寧に積み上げていく人の仕事は、いつの間にか周囲の信頼を集め、大きな成果へとつながっていた。人との距離の詰め方も同じだったように思う。一気に踏み込もうとすると相手は身を引き、少しずつ間合いを縮めていったときのほうが、結局は深い関係になれた。「life hack」というタイトルの奥にあるのは、そうした遠回りに見える工夫の価値を、静かに肯定する視線なのではないかと感じている。効率化という言葉の響きとは裏腹に、本当に効くハックというのは、たいてい地味で、時間のかかるものだ。

磐田の家と土地に見る、時間をかけた工夫

磐田に戻り、家や土地、家族の相談を受ける仕事をするようになってから、この曲の歩みをより身近に感じるようになった。土地の話も、家族の関係も、一朝一夕には片づかない。何十年という時間の中で積み重なってきた事情や感情があり、それを解きほぐすには、近すぎず遠すぎない、ちょうど良い距離感を根気強く探る作業が要る。派手な解決策よりも、小さな工夫を重ねていくことのほうが、結局は物事をうまく運ぶ。「life hack」というタイトルが恋愛の文脈で語っている工夫の精神は、そうした家族や土地との向き合い方にも、静かに通じるものがあると感じている。この曲がゆっくりと多くの人に届いていったように、家や家族の関係もまた、急がず、時間をかけて整えていくものなのだろう。

相談に来る人の中には、家族との間合いをどう取ればいいのか分からず、疲れてしまっている人も少なくない。近くにいすぎて息苦しくなる関係もあれば、遠すぎて連絡が途絶えてしまう関係もある。そのどちらでもない、ちょうど良い距離を見つけるのは、正直なところ簡単なことではない。それでも、小さな声かけのタイミングを変えてみる、会う頻度を少しだけ調整してみる、といった細やかな工夫の積み重ねが、長い目で見れば関係を変えていくのを、これまで何度も見てきた。「life hack」という曲が3年という時間をかけて多くの人に届いていったように、家族との関係を整えることも、一度の会話で解決するものではなく、日々の小さな調整の積み重ねなのだと思う。土地と家、そして家族。私が磐田で向き合っているものは、結局のところ、この曲が歌っている「距離感の工夫」と地続きの話なのかもしれない。

この曲を車の中で流しながら現場に向かうことがある。さとうもかの声がふっと重なる瞬間、東京で覚えた「焦らないことの強さ」と、磐田で日々感じている「距離を測ることの難しさ」が、一本の線でつながるような感覚になる。派手な近道を探すのではなく、目の前の小さな工夫を積み重ねていく。それは音楽の届き方であり、仕事の進め方であり、家族との付き合い方でもある。「life hack」というタイトルを、私はもう恋愛だけの言葉としては聴いていない。生きていく上で、誰もがどこかで必要としている、地味だけれど確かな知恵の話として、この曲を聴いている。

参考リンク

時間をかけてじわじわと届く曲があるように、家や土地にも、急がず整えていくべき時間があります。

静岡県磐田市周辺で、相続した実家・空き家・土地建物の整理にお悩みの方は、富士ヶ丘サービスまでご相談ください。

書いた人

大石浩之。静岡県磐田市で、介護と不動産の仕事をしています。 若い頃に東京で過ごした時間、仕事の中で見てきた家族や街の記憶、 そして今暮らす磐田で感じることを、音楽をきっかけに書いています。

音楽は、過去の自分に会いに行くための入口です。 家や土地もまた、誰かの記憶が残る場所だと思っています。