ヤノさんのラップにハマりました(笑)。この感想には、笑いを添えたくなる気持ちが正直によく分かります。「ヤノ」は、生身の人間のラッパーではなく、TVアニメ『オッドタクシー』に登場する、闇金業者に追われる不器用な男というキャラクターだからです。それでも、この曲を聴くと、ヤノというキャラクターのラップが、本物のヒップホップとしての説得力を持って迫ってきます。虚構のキャラクターが歌う言葉に、これほど真剣にハマってしまう。この感覚は、アニメと音楽という、本来異なるジャンルの境界線が、見事に溶け合ったときにしか生まれません。フィクションのキャラクターの言葉を、笑いながらも本気で受け止めてしまう。この曲は、そういう幸福な混乱を私たちに与えてくれます。
俳優がキャラクターに憑依して生まれた曲
「My Name Is... feat. PUNPEE」は、2021年7月14日に先行配信された楽曲です。TVアニメ『オッドタクシー』でヤノの声を演じたラッパーのMETEORが、ヤノというキャラクターにフォーカスしたインスパイア楽曲を制作するという企画のもと生まれました。プロデュースをPUNPEEが手がけ、作詞はMETEORとPUNPEEの共作です。この曲はSUMMITレーベルからリリースされたEP『2019』に収録されています。
METEORは、単にヤノの声を演じるだけでなく、ヤノというキャラクターの内面や背景を、自らのラップという表現手段を通して深く掘り下げました。声優が声だけでキャラクターを演じるのではなく、ラッパーとしての表現力そのものを使って、キャラクターの人生観までも音楽で描き出す。この試みは、アニメ音楽の新しい可能性を切り開いた例だと思います。PUNPEEのプロデュースが加わることで、キャラクターソングという枠組みを超えた、本格的なヒップホップ作品として仕上がっています。
予想外の入口からハマる音楽
音楽との出会いは、いつも王道の入口から来るとは限りません。アニメのキャラクターソングという、一見すると本格的な音楽ファンからは軽視されがちなジャンルから、思いがけない本物の感動に出会うことがあります。「ヤノさんのラップにハマった」という感想は、まさにそういう予想外の入口の面白さを物語っています。キャラクターという虚構の存在でありながら、その言葉には確かな重みと説得力がある。これは、フィクションと現実の境界を軽やかに越える、音楽の持つ力の証明です。
笑いながらも本気でハマってしまう。この矛盾した感覚こそ、優れたエンターテインメントが持つべき懐の深さなのだと思います。真面目一辺倒の音楽よりも、こういう軽やかな入口から、思いがけず深いところまで連れて行ってくれる音楽の方が、実は記憶に長く残ることがあります。
磐田で見つける、予想外の入口
磐田で家や土地の相談の仕事をしていても、思いがけない入口から、本質的な話にたどり着くことがよくあります。雑談のつもりで始まった会話が、実は相談者の本当に抱えている悩みの核心に触れていた、ということも少なくありません。「ヤノさんのラップにハマった」という、笑いを含んだ入口が、本物の音楽体験につながったように、思いがけない入口を軽視せず、大切に扱うことの価値を、この曲はあらためて教えてくれます。
笑いながら聴き始めた曲に、いつのまにか本気で聴き入っている自分がいる。そういう幸福な出会い方を、これからも大切にしていきたいと思います。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、予想外の入口から始まった出会いの記憶を読み直す場所です。
