「Liberation(解放)」という言葉を、活動休止を発表したあとのバンドが選ぶとき、そこには単なる偶然以上の重みが宿ります。Nulbarichは、2024年12月5日の日本武道館公演をもって活動休止に入ることを発表しました。この曲は、その発表のあとにリリースされた、初めての配信シングルです。休止という、ある種の終わりを見据えた状況で鳴らされる「解放」という言葉。それは、活動を止めることへの寂しさではなく、むしろこれまで背負ってきたものから、いったん自由になるという前向きな響きを持っています。終わりを恐れながら鳴らす音ではなく、終わりを決めたからこそ鳴らせる、澄んだ解放感。この曲を聴くと、そういう覚悟の上に立つ音楽の強さを感じます。
活動休止発表後、初のシングルとして
「Liberation」は、2024年8月7日に配信リリースされた楽曲です。SaaS企業「HENNGE」の新CMソングとして書き下ろされたこの曲は、Nulbarichが活動休止を発表したあとに世に出た、初めての新曲でした。企業のCMソングという、ある意味で華やかな仕事に、活動休止という重い決断の直後に取り組んだこと自体、彼らが最後まで音楽そのものへの誠実さを崩さなかったことの証明だと思います。
このサイトでは、これまでNulbarichの多くの楽曲を取り上げてきました。デビュー作の「NEW ERA」から始まり、数々のフィーチャリング曲、そして直近の「A Roller Skating Tour」まで。彼らの歩みを追いかけてきた身として、この「Liberation」という曲が、ひとつの区切りに差し掛かった時期に生まれたことには、特別な感慨があります。
終わりの手前で鳴る、解放の音
東京で働いていた頃、会社を辞める決断をした人たちが、退職の直前になって、それまでとは違う晴れやかな表情を見せることがよくありました。まだ籍はあるのに、すでに次の場所へ向かう心の準備ができている。その過渡期にある人特有の、解放感と緊張感が入り混じった顔つきを、私は何度も見てきました。「Liberation」という曲が持つ空気感は、まさにそういう、終わりを決めた人だけが持てる、特別な軽やかさに満ちています。
活動休止という決断は、決して後ろ向きなものではありません。むしろ、これまで積み重ねてきた重みを、いったん脇に置き、新しい形での自由を得るための、能動的な選択です。「解放」というタイトルは、そうした前向きな終わりの迎え方を、そのまま体現しています。
磐田で迎える、それぞれの解放
磐田で家や土地の相談を受けていると、長く続けてきた仕事や、背負ってきた責任から、いったん解放される決断をする方々に出会います。実家を手放す、店を畳む、役割を次の世代に譲る。そのどれもが、終わりであると同時に、新しい自由の始まりでもあります。Nulbarichがこの曲で見せた解放感は、そうした人生の節目における決断の在り方に、静かなヒントを与えてくれます。
終わりを決めることは、逃げることではありません。むしろ、しっかりと区切りをつけたからこそ、次の一歩を軽やかに踏み出せる。この曲を聴くたびに、そうした、覚悟の上に成り立つ解放感の尊さを、あらためて感じさせられます。
ATAWI MUSICは、音楽を消費するサイトではありません。曲をきっかけに、終わりを決めたからこそ得られた解放の記憶を読み直す場所です。
